木曽駒ヶ岳の南隣にある百名山の一つの空木岳。中央道駒ヶ根ICからすぐの菅の台パスセンターから日帰りでピストン登山してきた。
日帰りできるかどうかについては、個人差があるので何ともいえないのが正直なところである。一つの基準としてはコースタイムで10時間以上の山行を難なくこなせることであると思う。
今回の醍醐味
圧倒的爽快感ッ!!それが森林限界の抜けたときの感想であった。
高山に登る醍醐味はなんと言おうと森林限界を抜け、視界が開けた瞬間の爽快感にあるッ!樹林帯を抜けて現れる空木岳の端正な顔立ちにテンションがMAXになった。
樹林帯では数メートルからせいぜい数十メートルであった視界が一気にキロメートル単位に視界が広がる。閉塞感からの開放。その差を樹林帯から高山帯の狭間で感じることができる。
今回は樹林帯が霧の中であったので、山頂の一部だけでも晴れていたのが、さらなる爽快感につながっているかもしれない。
駐車場について
駒ヶ根高原スキー場の駐車場が無料で使用できる。平日に登ったからか数台しか駐車されていなかった。かなり広い駐車場なので、満車になることはないかと思う(スキー場オープン時の12月中旬から3月上旬までは利用不可である)。
GoogleMapで検索すると駒ヶ根高原スキー場が臨時休業とあるが、休業はスキー場で駐車場は問題なく使用できる。
勘違いした僕はスキー場の駐車場が使えないと考え、少し離れた菅の台バスセンターに駐車して歩いて登山口まで行った。
菅の台バスセンターの駐車場は自動車800円、バイクは200円が駐車料金としてかかる。バイクの場合、車と同じゲートから駐車場に入場できないので、管理の方に案内してもらえる。
登山コースについて
今回は菅の台バスセンターから池山尾根から空木岳までピストンした。以下はYAMAPの記録。
2021年9月 空木岳 池山尾根 日帰り / ずんやまさんの空木岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
僕は8時過ぎと遅めに登り始めて、17時30分過ぎに駐車場に帰着した。休憩を含めて9時間30分の山行であった。駐車場につく頃には少し暗くなり始めていた。
標高差
歩行距離にして10km、標高差2000mを一気に駆け上がる!これは日本屈指の標高差をかせぐ登りになる。そして永遠の登りに感じられる。
菅の台バスセンター(標高850m)→空木岳(標高2864m)
この長大な登りも醍醐味の一つではあるが、普段から登山に慣れていてさらに、体力自慢にしか日帰り登山はおすすめできない。
菅の台バスセンターから空木岳山頂までほぼ一本道で登ることができる。途中多少分岐があるが、別の道を選択しても距離にそれほど差はない。
コースタイムは12時間以上!
YAMAPでは登り6時間53分、下り5時間25分の合計12時間18分のコースタイムである。コースタイムは場所によって時間が短かったり、長かったりするが、この時間はYAMAPの標準的な時間であると思う。
YAMAPに慣れている方であれば、自分の歩行速度をコースに倍率をかけると大体の時間が予想できる。例えばいつもコースタイムの9割ほどで歩いている人であれば、以下のようになる。
12時間18分×0.9=11時間4分
計画をたてた後は、朝早くから登ることをオススメする。空木岳に登る登山者であれば問題ないと思うが、計画よりも時間は長くかかるものである。当然12時間のコースタイムに休憩も加味して考えるべきで、余裕を持った計画を立てて登るようにしたほがよい。
必要な体力について
登山に慣れていない場合や体力に自信がなければ、このコースは避けることが無難である。たとえ気合で登りきったとしても辛さだけが残る登山になってはもったいない。
登山に慣れている方だけがこのコースで登るべきである。上でも書いたが、YAMAPのコースタイムは標準的な速さなので、予想通りのスピードで登れるだろう。行動時間が予想できない人は登ってはいけない。
別の予測方法としてはいつも登っている山の標高差は何mか確認することである。標高差500mであれば4回分、1000mであれば2回分である。これを余裕でできると思えば挑戦してもよいのでは無いかと思う。くれぐれも自己責任ではあるが。
登山記録
登りも下りもとても長い。
菅の台バスセンター→空木岳 コースタイム6時間53分
菅の台バスセンターから駒ヶ根高原スキー場に進むと空木岳への登山道入口を示す看板がある。登山道がわかりやすいのは百名山の特徴かと思う。
最初はこのような森の中を歩いて徐々に標高を上げていく。
しばらく登ると林道古城線(池山林道)終点と登山道が合流する。現在2022年は通行止めになっている。
ここまで車での登ることができれば、コースタイムでは2時間ほど短縮になるので日帰り登山はもちろん、ヒュッテで一泊する場合も相当楽になると思う。
霧で霞む神秘的な登山道を進む。
「登山はやっぱり晴れたほうがいい!」というのは当然のことなのであるが、僕が個人的に推したいのはガス(霧)中の樹林帯を歩くことである。霞がかった視界は静かで、神秘的な面持ちがある。喧騒から離れ、自身の内面に精神が向かう。
ヒキガエルと遭遇!
思わず生き物と遭遇するのも登山の醍醐味の一つである。毎回会えるとも限らない。むしろ何にも会わないほうが多いかもしれない。この山域は熊出没注意の看板があるので願わぬ相手との遭遇もありうるので十分注意する必要はある。
今回はヒキガエル(おそらくアズマヒキガエルか?)と会えた。のんびりしていてカワイイ。
霧の中の水飲み場
池山山頂への分岐地点にある水場。霧の中で雰囲気がある。木のベンチのようなものがあるので、そこに座りボーッと水が落ちていく様子を眺めるのもよいかもしれない。
コップも用意されているが、使うか使わないかはアナタ次第である。
登っていくと樹種が変わる。標高2000mを一気に登るので、標高ごとに多様な木々を愛でることができる。
大地獄・小地獄
途中に危険地帯のような名前の場所がある。物騒な名前がついているが、それほど危険かと言われれば答えはNO。鎖やはしごがついているので、安定して登ることができる。そして鎖、はしごは使わなくても登れる。
また、滑落して数百メートル真っ逆さまというような断崖絶壁でもない。ただし急な登りではあるので、「注意して登ってください」くらいのニュアンスなのかなと思う。
大地獄・小地獄の前後には危険地帯であることを示す看板が存在する。日本語、英語の2カ国語表記、登りと下りの2つの合計4回同じことが書いてある。
全てが「×00m」で百の位の数字がないので、どれくらい続くのかわからないようになっている。目を凝らして見ると400mのようであるが、注意して歩けということは変わらないので、特に問題はなさそうである。「4」という数字だけ異様に風化に弱いのは謎である。
さらにしばらく登り進むと森林限界を突破する。ここが高い山に登る一番の醍醐味かと思う。急に視界が開けるので驚きとともに強い感動を覚える。
山頂が近くに見えるので、もう少しと思うが標高300mほどをまだ登る必要がある。山頂付近で低山一つ分くらい登らなければならないのが日本アルプスの巨大さというところか。
視界が開けて山頂の次に目に入るのが「駒石」である。非常に大きい。
駒峰ヒュッテ
山頂直下2800mにあるヒュッテ。ここから10分も歩けば空木岳山頂に達することができる。「こまほう」と読む。
雲を上から眺めることができる。晴れていれば木曽駒ヶ岳方面も眺めることができるであろう。北側にテラスが設けられているので、そこでのんびり山や雲、下界の様子を見るもの乙なものかもしれない。
2022年の開設は予約制で、連絡が必要なようである。1泊2日で登る場合はこちらに宿泊して1日目は登るだけ、2日目は下るだけの山行も妙手かと思う。
山頂からの景色
森林限界を超えるところは冒頭の通りであるが、山頂からの景色もまたよきかな。今回は日帰りでピストンになるが、今度は南駒ヶ岳もしくは北の木曽駒ヶ岳への縦走路を歩いてみたい。
高山帯での尾根線を歩くのは雲の上を歩くに等しい(そんな気がする時もある)。
山頂からは晴れていれば北、南アルプスも一望できたであろう。標高2864mの山頂にはさえぎるものは何もない。
山頂で記念に自撮りをする。自撮りがあまりにも下手。空木岳のキレイな真砂がばっちり撮れた。
空木岳→菅の台バスセンター コースタイム下り5時間25
歩行距離10km、標高差2000mを一気に下り降りる!
登った道を下ることになるのだから当然、永遠に続く。延々ではない。僕が言いたいのは永遠。永遠に感じられるような下り。
達成感としては登りよりむしろ下りに軍配が上がるかもしれない。それくらい長い下りを下りきった喜びは大きい。登りの報酬が景色があり、下りの報酬はご飯、温泉がある。登山とは言うものの、下山も面白いものである。
山頂から300mほど標高を下げる道は空木平の避難小屋方面を利用した。こちらは谷筋の少々急な道を下った。
登ってきた道をひたすら下りる。ひたすら長い。
下山途中で池山林道終点で景色が開ける。登りはガスっていて何も見えなかったが、よく景色が見えて嬉しかった。
ここから駒ヶ根市を眺めることができる。標高は1350mほどで登山口から400~500m登ればこの景色を見ることができる。
登山をしていればわかると思うが、最後の1~2時間がなくなれば、疲労の蓄積は相当ましになる。また、ここまで車で登ってこれればという精神的負荷もかかるので、開通を待って林道の終点を登山口にすることを考えてもよいかと思う。
総括
深い満足感と強烈な疲労感が残った。
バイク往復6時間ほど、登山の往復9時間ほどで強行軍で行った。深い満足感はあるが、登山自体の疲労と登山口までの移動の疲労が強烈な疲労として残った。
筋肉痛が翌日も翌々日も全く取れないほどであったが、登山の思い出だけで飯が食えるくらいの充実感があるので総合的に非常に満足の行く山行であった。また、駒ヶ根のソースカツ丼がうまい!下山後に是非オススメ。
名前も容貌も美しい空木岳は推せる山である。ただしそれなりの体力をつけてからである。
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