御嶽山 濁河温泉コース(前編)

高山その他

2020年8月に御嶽山(標高3067m)に登ってきた。日本三霊山に数えられる山岳信仰の盛んな山で独特の雰囲気を感じられた。大きな懐を持つ、畏敬の念を抱かずにはいられない、存在感のある凄まじい山である。

今回は濁河温泉からのコースで登ってきた。下山後に入る温泉は最高であった。もう一度入りたい。

どんな人にオススメする山か

誰にでもオススメできる。とは言わない。高度な技術は要求されないが、全くの初心者が登ることはオススメしない。どの登山口からもそこそこ距離があるので、ある程度は適当な低山などで経験を積んでから良いと思う。

摩利支天乗越から五の池小屋。奥は継子山。

登りやすい山ではあるが、運動不足の人間が登れるような甘い山ではない。では、どのような人にオススメかというと、以下のような方にオススメである。

・脱初心者を目指す方
・初めての3000m峰に登りたい方
・修験道を雰囲気を味わいたい方

初心者からの中級者へのステップアップに登る山として最適かもしれない。

駐車場

登山口手前の駐車場

登山口手前に20~30台程度止めることができる駐車場がある。8月の日曜日の8時頃に到着したが、すでに駐車場は満車であった。かなり早く到着しないと駐車場はすぐに満車になることが予想されるので注意が必要である。こちらの駐車場が満車でも別の駐車場があるので、駐車の心配はない。

温泉街手前の駐車場

濁河温泉の温泉街入り口にも駐車場があるので、そちらに駐車するとよいだろう。おそらく満車にならないと予測される。ただそこから登山口まで1㎞12分ほど歩く必要があるので、できれば登山口手前の駐車場に停めたいところである。

登山コース

疲労度・危険度

疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。

疲労度★★★
危険度★★

往復8時間を超えるコースなので、そこそこ疲労する。疲労が貯れば、それだけ後の温泉が気持ちいいので、疲労してもあまり問題はない。

整備の行き届いた登山道で、それほどの危険性はない。通常の登山と同様に、木の根や石などに気をつけて歩いていれば、生命の危険性はない。

よく整備された道。

ハイマツ帯でダイナミックに転倒している方がいたが、気をつけて歩けば特に問題はない。気を抜けば誰だってコケる可能性はある。

最後の坂を振り返る。

2014年の噴火の記憶はまだ新しいと思う。遭遇する可能性は殆ど無いに等しいが、火山に登るということは噴火の可能性を捨てるわけにはいかない。覚悟はしておく必要がある。

個人的に一番きつかったポイントは山頂直前のザレた(小石や砂の地面)坂道を登るところである。この坂単独で見れば大した坂ではないのだが、最後の坂となるとラスボス感はある。

この山で最も空気の薄いところを登りの中で最も疲労が溜まった状態で登るので、かなりきつかった。ただ下界の景色が開放感はあり非常に気持ちはいい。

コースタイム

濁河温泉登山口から飛騨山頂まで3時間20分。標高にして1000mの登り。
飛騨頂上から御嶽山山頂まで1時間20分。おおよそ300mほど登る。登り合計4時間40分。
御嶽山山頂から濁河温泉まで3時間30分。登り下りあわせた行程は8時間ほどになる。

摩利支天山を周回するならもう一時間余分に見ておいてもよいかもしれない。

コラム:コースタイムはどれくらい?

自分がコースタイムと比較してどれくらいになるかを低山などを歩いているときに見ておく必要がある。

各人の体力に応じて異なるので、自分でタイムを測って自分のコースタイム倍率を目安として知っておくと良い。以下の式はコースタイム倍率の求め方である。

コースタイム倍率=自分のタイム÷コースタイム

例えばコースタイム60分の登山道を歩いて、45分かかった場合は45÷60でコースタイム倍率は0.75である。また75分かかった場合は1.25である。

このコースタイム倍率をかけて実際の登山の想定時間はどれくらいになるか求める。

例:濁河温泉ルート往復8時間野道をコースタイム倍率0.75が登ると
  8時間✕0.75=6時間

コースタイム倍率が0.75の人はけっこう速いので、コースタイム8時間の道でも6時間で歩けてしまうので、より多くの道を歩くことができる。

コースタイムはあくまでも目安である。短い距離では速くても、長い距離を歩く場合は遅くなってくることや、登りは速いけど、くだりは遅いなど個々人の特性が出る。自分の特性を知り、コースタイムを予測できるようになると登山計画をたてる際に便利である。

どのコースからでも3時間はかかるので、気軽に登れる山では無いだろう。

二ノ池山荘。山荘があちこちにあり、充実した小屋泊をおくれるだろう。

山小屋が点在しているので、1日にそれほどの距離が歩けない場合でも、1泊すれば問題なく登れることもあるかと思う。例えば濁河温泉から剣ヶ峰直前の二ノ池山荘に宿泊することを想定して1泊2日の計画をたてるとする。

1日目:8時出発、コースタイムおおよそ4時間。休憩1時間とすると13時に山荘につく。
2日目:5時出発、6時頃山頂で ご来光を拝み、7時に山荘戻り、4時間ほどかけて11時ごろに濁河温泉に到着して温泉に浸かる。

上記のような計画で御嶽山に登るのはいかがだろうか。また時間に余裕があるので、北の継子山までの周回をしても良いだろう。

標高差

標高1780mの濁河温泉から標高3067mの御嶽山山頂までのまでの約1300mを登る。

標高差1000mを超えると初心者では苦行になるので避けたほうが良いだろう。登山が苦行になってしまうと見ている方も辛いので十分な体力を手に入れてから挑戦するほうが良いだろう。

摩利支天山にて。蝿が止まり、ランチパックもパンパンになる有様。パンパンなのは特別にしてもらってるのか?

このランチパックの写真のように下界から密閉された袋を持っていくと、パンパンに膨張する。それほど下界の空気は濃く、山の上の空気は薄い。

好きな言葉なので何度でも引用するが、芥川は高山の空気についてこのように記している。

自由は山巓《さんてん》の空気に似てゐる。どちらも弱い者には堪えることは出来ない。

芥川竜之介『侏儒の言葉(しゅじゅのことば)』より

我々登山者は、もしかすると自由を求めて登山をしているのかもしれない。

空気が薄いと、運動能力は少なからず低下する。低山で歩いているときよりも歩く速度が遅くなることを予想しておく必要がある。

総括

総じて歩きやすい印象ではあるが、短い登山道ではないので体力的には余裕を持って登山に望みたい。

今回はコースタイムを計算することについて記載したが、登山初心者の頃は山行の計画をたてないかもしれなが、長時間の登山を計画する場合にコースタイムの計算は必須になってくるので身につけたい。コースタイムが正確に予測できるようになれば、慌てることなく山行を終えることができるだろう。

見どころをまとめた後編はこちらから。

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