マルゴのコハゼ(留め金)が12枚の地下足袋で登山をしてみた。マルゴの地下足袋の使用感と使用して登山した感想を紹介する。地下足袋で登山をしてみたいあなたに参考になれば嬉しい。
マルゴの地下足袋は「これぞ地下足袋!」というお手本のような見た目と使い心地の地下足袋だ。
履き心地も見た目と同じでスタンダードな地下足袋だ。基本的な地下足袋の機能を持っていた。
地下足袋で登山をしてみたいという方は、これを選んでおけば問題ないだろう。最初の地下足袋は色々迷うかもしれないが、それほど高いものではないのでスタンダードなもので間違いないだろう。
マルゴの地下足袋で登山をしての結論としては
この地下足袋で登山をすることは十分に可能だ。
しかし歩く距離は短めからがオススメする。
最初の地下足袋はクッション性の高いものから選ぶのも賢い選択であるが、「地下足袋を体験したいっ!」という方には薄い底の通常の地下足袋をオススメする。
オーソドックスな使い心地のために、この地下足袋というよりも地下足袋全般の感想になっているが、ご容赦願いたい。
今回の前提として登った山は、金糞岳、鳥海山、月山、早池峰山の4山だ。
地下足袋の印象
見た目の通りの地下足袋だなという感想だ。
コハゼの調整段階
コハゼ(留め金)は5段階の締付け具合で留めることができる。ふくらはぎから足首の太さによって、締付けを調整できる。
太さの幅はかなり余裕があるので、極端な太さ、細さでなければ問題なく履くことができる。
最初は若干コハゼを留めにくいと思ったが、使っているうちに留めやすくなった。
裏地は無地の白色
裏地に柄はなく無地の白色だ。デザインにも凝った地下足袋は裏地に模様が入っていたりするが、最もシンプルな色が採用されている。
スタンダードに留め金のコハゼをすべて留めることを前提とした地下足袋だ。
足裏はゴムの色
個人的にはソールも真っ黒の方がスッキリとした印象があるので、真っ黒が好きだったが、ゴムの色がそのままでも黒い地下足袋のアクセントになっていい感じだと思う。
ゴムの色がそのままというのは地下足袋らしい地下足袋という印象でオーソドックスでよい。結局のところシンプルなものがよいのかもしれない。
またヒダのように加工されており、土によくからんで滑りにくいと考えられる。
メリット
地下足袋の一般的なメリットとして軽くて歩きやすい、歩いて気持ちいいという点がある。その他にマルゴの地下足袋で歩いて感じたメリットを上げてみた。
安い
2000円台で一足を購入することができる。登山靴ほどの耐久性はないが、繰り返し登山に使用することができる。登山靴は長く使えるが、消耗品である点は地下足袋と同じである。。
厳しい環境で使う道具は消耗品なので、気軽に買えて、気軽に使える地下足袋は山にも最適なのではないだろうか。
何かと登山をするにはコストがかかる。そのコストを削減できるという一面もある。
今回使ったの以下の地下足袋だ。
12枚というのは留め金(コハゼ)の枚数のことで、地下足袋は12枚入っていない。地下足袋は一足だけである。
目立つ
人によってはデメリットかもしれないが、地下足袋を履いていると目立つ。特に多くの人とすれ違う人気の山を歩いていると、地下足袋について話しかけられることが多くなる。
「素敵だ」、「痛くないのか」、「カッコいい」、「足袋だ」など鳥海山に登ったときは色々な言葉をかけていただいた。特に「素敵だ」は言われて嬉しかった。
登山のスタイルとして他とは一味違うスパイスのように地下足袋を装備するのはいかがだろうか。
ズボンの裾を織り込める
12枚のコハゼは長いのでズボンの裾を織り込んでも、ズボンが足の動きに干渉しない。短めの地下足袋を履くとズボンの裾を折り込むことができない。
ズボンの裾を折り込むメリットは2点ある。ファッションとして野球選手がズボンの裾を上げるクラシックスタイルのように足元からスッキリとした印象があり、カッコよく見える点である(個人の見解)。
もう一つはヤマビルの多い山で裾を織り込むことで、ズボンの裾からのヤマビルの侵入を防ぐことができる。
デメリットは裾を折り込むと暑いことである。
フィット感がある
12枚のコハゼだと丈が長いのでフィット感が増す。コハゼは3枚でも十分なフィット感があるが、ふくらはぎまで地下足袋があると自分の足の拡張機能であるような気がしてくる。
土はきっちり絡むこと
底面の構造を見るとわかるが、底面はギザギザになっていて、登山道の土とよく噛み合って滑りにくくなる。土の登山道を歩くときには十分に活躍できる。
また土のフカフカ具合も感じることができる。
底が薄いことで足裏が気持ちいい
序盤は足裏に丁度いい刺激があり、大地の上を歩いている感じがして気持ちいい。生きている感じがする。
特に石の上を歩いたりすると、足裏への刺激が強くなり、さらに気持ちいい。尖ったところを踏んでしまうと痛いときもあるので注意が必要だ。
石の上を歩くときは足裏の土踏まずあたりで地面を捉えることが多くなる。土踏まずあたりが一番底が薄い。ソールのデコボコがないので、まさに石を直に感じることができる。
雪渓の冷たさがダイレクトに感じられる
地下足袋は感触だけなく、温度も楽しめる。
登山靴で雪渓の上を歩いても冷たさは感じないが、地下足袋で歩くと冷たさをダイレクトに感じる。数秒は冷たくもなんともないが、すぐに足裏が冷たくなる。
今回は雪渓を渡るだけだったので問題はないが、雪渓を登るときには冷たくて使用できない。雪渓を登る途中には冷え切って足裏の感覚がなくなっているだろう。
また日差しを浴びて熱くなった石も、しばらく足を乗せておけば熱さを感じられるだろう。石の熱さによる弊害は特になかった。
フラット接地がしやすくなる
普通の靴はかかとに分厚いクッションがあり、かかとから地面につくように設計されている。
その点で地下足袋にはかかとのクッションはないので、裸足で歩くときと同じような感覚で歩くことができる。
裸足で歩くときと靴を履いて歩くときに感覚が違うので、違和感を感じている方もいるかと思う。地下足袋を履けば、裸足で歩く感覚とよく似ている。
普段かかとから地面に接地している人も、かかとからつくと衝撃がモロにくるので、長時間を歩く場合は柔らかな接地をする必要がある。
登山の歩行技術として、足裏の接地面積を広くすることで、滑りにくくすることができる。滑りにくい歩き方を意識しやすくなる点はメリットだと思う。
蒸れにくい
登山靴を履いていると足がどんどん蒸れて、マメができたりすることはないだろうか。この地下足袋を履いていると蒸れをあまり感じない。
地下足袋をズボンに折り込んでいるところは汗をかくが、足裏付近は特に問題なかった。
だからといって特別、通気性に優れているわけでもないので、大量に汗をかく暑さの場合は蒸れは避けられないかもしれない。
乾きやすい
登山靴よりも生地が薄いので乾きやすい。雨の中で月山に登って、軽く乾かしただけで、次の日に早池峰山で若干の生乾きがあったものの使えた。
登山靴であれば、一度濡れてしまえば乾かすために長時間かかるだろう。このリカバリーの速さもこの地下足袋のメリットである。
タフな登山道で使用できる
感想としてマルゴの地下足袋はタフな登山道でも十分に通用した。
登った山は、後ほど紹介するが、金糞岳、鳥海山、月山、早池峰山の4山だ。
特に今回登った東北の3山は登山道むき出す岩がある、一般的には登山靴を履くことを推奨される道である。
地下足袋で登山することへの慣れも必要かとは思うが、特に問題なく歩き通すことができた。石の上を歩いてもバランスを崩すことなく歩き続けることができた。
デメリット
軽く歩きやすいことはデメリットと表裏一体である。今回使用して感じたデメリットを上げてみた。
石の上では滑りやすいこと
メリットでは土の上で滑りにくいことを書いたが、マルゴの地下足袋は舗装路、石、岩の上を歩くときには滑りやすい。岩の種類によっては乾いていも滑ることがあるので、注意を要する。
特に雨の中の岩・石は滑りやすい。ツルツル滑るくらいに滑る。雨で濡れた石の上を歩く場合は、足の置く場所を十分に注意していなければ、いともたやすくコケる。
そして気をつけていても滑ってコケる。滑ることを前提とした歩き方を覚え、覚悟しておく必要がある。
雨に濡れた舗装路も素材にもよるが滑る。金糞岳の舗装路の登り坂はかなり滑って難儀した。
底が薄いことで足裏が痛くなる
メリットの足裏の感覚を楽しめる点と表裏一体のデメリットである。底が薄い分、地面からのダメージが直接伝わってきて、足裏が段々と痛くなってくる。
前半は気持ちよく歩けるが、登山後半は足裏にダメージが蓄積して歩く度にダメージを受けるようになる。
特に石の上を歩く登山道が多い山はかなりのダメージが溜まる。最初は土の登山道がある山で短めの時間で楽しむのが最適だと思う。
★足裏が痛くならないための対策
1.時間短めのゆるい登山から試してみる
2.ゆっくり、丁寧に歩く
3.歩き続けて慣れる
「3.歩き続けて慣れる」というのは根性論のようだが違う。はじめは2時間も歩けば足裏が痛くなっていたのが、4時間を超えても痛くはなくなる。慣れでどんどん歩ける距離が長くなるので、試してみてほしい。
また登山道では、登りでも下りでもつま先を付近から地面に足をつけることが多くなった。それゆえに足裏のつま先側が痛くなった。
逆に舗装路があると足裏のかかと側が痛くなる。これは舗装路ではかかと付近からの接地になりやすいからだろう。
土踏まずで岩の先に乗ると痛い
石の上は土踏まずで歩くことになる。そうすると石の上を歩く度に土踏まずにダメージが蓄積し、土踏まずが痛くなってくる。
石の上をつま先で歩くことはできるが、ふくらはぎの筋肉を酷使することになる。かかとで歩くとバランスを取ることが難しいので、石の上では必然的に土踏まずをまず接地しての歩行になるだろう。
膝の痛みも出るかも
歩き方にもよるが、靴底にクッションがないので、着地の衝撃が直接膝に伝わる。個人的な観察では、クッションがあることを前提としたドシドシ歩きをしている方が多い気がしている。
裸足で歩いているときに、かかとから着地して床をドンドン鳴らしている歩き方だとすぐに膝にくる可能性があるかもしれない。なるべく丁寧に足を置くように歩きたい。
僕としては丁寧に足を置くように意識しているからか、膝が痛くなることはなかった(それとも生まれつき膝が強いのかは謎)。
つま先でバランスが取りづらい
石の上限定ではあるが、ソールのデコボコが上手く石と合わなかった場合に少々バランスが崩れる。これは微妙な足裏感覚の話なので、特に大きな問題ではないが、そういう感覚もあったので紹介した。
下りでつま先が食い込む
階段では問題ないが、傾斜のある下り坂を歩く際には、つま先で踏ん張ると思う。その際につま先に体重の負担が集中することになり、特に親指の爪あたりが痛くなった。
登山靴であれば地下足袋でつま先に集中した負荷が靴べらなどで分散されるが、地下足袋にはそのような機能が無い。
消耗が早い
石でつま先が削られる。石でボコボコの登山道を歩くと、石につまづくことが多くなる。その度につま先を石にぶつけてつま先の布が消耗する。
マルゴの地下足袋を使っての2回目の登山は鳥海山に登ったが、登山前は全く消耗していなかったつま先に少し破れができてしまった。
山登りに使用するには先にカバーがあるタイプの地下足袋が適していると思う。
少々底が厚くなってしまうが、以下であれば先の破れは多少マシになるだろう。
また底面のキザギザ部分が石かなにかで削り取られてしまっている。4回の山行にしては登山靴のソールよりも消耗が早いと思う。
地下足袋の上端部が下がってくる
12枚のコハゼがあり長目の地下足袋なので、長い靴下がずり落ちて来るように地下足袋もずり落ちて来た。
ずれ落ちてくると履き心地のフィット感が少々損なわれ、見た目もあまりよろしくない。
強めにコハゼを留めると少しマシになる。長いとフィット感が増すが短い方が取り回しはよいかもしれない。
ずれ落ちることが気になる方はコハゼが5枚くらいの地下足袋がよいだろう。ただしあまりに短いとズボンの端を折り込めないので注意が必要だ。
こちらの商品は少々エアクッションが入っている。「クッションなぞいらん!」という方は注意してほしい。
防水性能が無い
当然ではあるが、布製の地下足袋では防水性能はない。登山靴は基本的に防水なので、防水がないので登山に常用するにハードルが高い点かもしれない。
足元が濡れるくらいは「一向にかまわんッッ」という覚悟をしておく必要がある。
そして上でも書いたが濡れると滑りやすい。
防水性能がある地下足袋も販売されているが、ゴム長靴のようなものばかりで、洗練された商品があまりなさそうである。
長靴のようになってしまうと、動きやすい、軽いといった地下足袋の良さが薄れてしまうので、個人的にオススメはしない。
マルゴの地下足袋で登った山
参考までに山行時間と登山道のコンディション、天候の紹介する。マルゴの地下足袋を使って登ったのは以下の山々だ。これまで書いてきたのはこれらの山を歩いての感想である。
合計の歩行時間は24時間30分、歩行距離は51.9kmである。
まだまだ問題なく使用を続けることができそうである。
金糞岳(滋賀県)
山行時間:8時間
歩行距離:17.2km
獲得標高:1351m
登山道:土(軽い藪こぎ)、舗装路
天候:雨
日付:2022年7月23日(土)
土の地面が多く地面が柔らかめで、ほとんど足裏が痛くならずに山行を終えることができた。登山道の質が足裏へのダメージと直結していること実感した。
鳥海山(秋田県、山形県)
山行時間:7時間
歩行距離:15.5km
獲得標高:1394m
登山道:岩、石
天候:曇り、晴れ
日付:2022年8月6日(土)
山頂から外輪山を歩くところまでは特に足裏は痛くなかった。むしろ気持ちよいくらいだったが、外輪山から下ったあたりから、少々足裏が痛みだした。そして少々の痛みのまま下山完了した。
月山(山形県)
山行時間:5時間
歩行距離:9.9km
獲得標高:484m
登山道:岩、石、木道
天候:雨
日付:2022年8月7日(日)
鳥海山の次の日に登ったので、足裏が少々痛いところからスタートした。石の多いコースで、足裏が常に攻撃されているような感覚だった。
下山中が痛みのピークで痛くならないように上手く足を置くようにして歩いた。地下足袋に慣れていなければ、痛みで登山に集中できない自体も起こり得る。
また雨の中を濡れた石の上を歩いて登った。濡れた石は滑る。氷のように滑った。
早池峰山(岩手県)
山行時間:4時間30分
歩行距離:9.3km
獲得標高:886m
登山道:岩、石、木道
天候:曇り
日付:2022年8月8日(月)
月山の翌日に登山した。月山での痛みはほとんど取れていて難なく登ることができた。滑りやすい岩に難儀しながらも、特に問題なく山行を終えることができた。
総括
地下足袋登山は万人に勧められないが、興味のある人は一度使って見てほしい。登山をする際は登山靴を履くことが基本であることは間違いない。
地下足袋の値段はたったの2,000円だ。
しっかりとした登山靴の10分の1の値段で購入できる。これでしっくり来なかったとしても財布の痛みは少ない。
新しい感覚の登山体験、一味違う登山ファッションを2000円でできるのであれば安い買い物ではないだろうか。
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