鈴鹿の沢で初めての沢登りをして感じたリスク、考えた改善点

沢登り

登山からステップアップして沢登りも始めたいという方に向けて、最近になって初めて沢登りをした僕が感じたリスク、考えた改善点を紹介する。あとおまけで楽しかったことを紹介する。

単独行で沢登りを始めるのは推奨される行為ではないかもしれないが、始めようとしている方の参考になれば嬉しい。

寒い、滑りやすい、滑落の危険性など通常の登山よりもはるかに難易度が高いけれども、楽しさも格別だった。

あくまでの初めての沢から帰ってきた人間の意見である。そして以下が初めての沢登り記録である。

前編では準備の際に考えたことを挙げてみた。

危険だと感じたこと

実際に登って危険だと感じたことを列挙する。危険を回避すれば安全に登ることができる。そのために危険は把握しておく必要がある。

初級のルートとはいえ危険なことは間違いないので、何にせよ安全策は何重にもとっておいたほうがよい。

転倒のリスク

滑る危険性

常に滑って転ぶリスクがある。これは通常の登山と同じであるが、濡れていたり、コケが生えて滑りやすい石の上を歩く頻度が高くリスクは遥かに大きい。

滑ってコケても手をつければ問題はない。しかし石がゴロゴロして水量の多いところでコケると手のつく位置が瞬時にはわからない。手のつくところ次第では大きなケガにつながる可能性がある。

石がゴロゴロ。

滑ってころんだ際に膝を打つ可能性もある。むき出しの石がゴロゴロしているので危険である。

僕は足を滑らせて、かかとを岩に打ちつけてしばらく痛い思いをした。

滑ることによる様々なケガのリスクを想定した上で沢登りに興じたい

滑落の危険性

滝や岩をどう突破してよいのかがわからない。通常登山の主要なルートの岩場であれば、鎖や目印が用意されている。沢には鎖や目印はない。自分でルートを見つけるしかない。

しかし初心者ゆえに登る岩のうまいルートが見つけられない。これは経験がものをいうだろう。難しいルートを選択すれば、次の一歩が届かなかったりして滑落する危険性は高まる。

回避した滝。後々考えると簡単そうに思う。しかし滝壺には安易に落ちることはできない。

滝壺であれば登攀中に水の中に落ちても大丈夫だろうと思っていたが、沢の水に透明度はあっても滝の泡沫で滝壺の中が見えない場合がある。

あらぬところに岩があれば致命傷を負う危険性があるので迂闊に水の中には落ちることができない。

なので危険性が高いと感じれば回避する方がよいだろう。

寒さのリスク

寒かった。沢の水は思った以上に冷たい

太ももまでしか濡れていなくても寒い。前半は深くて太もも辺りまでしか水に浸かっていなかったが、全身が冷え始めていた。

最初から深いところで泳がなくてよかったと思った。沢の中を泳いで行動できる時間は以外と短い。

全身を濡らすタイミングは計画的に考える必要がある。行程があとどれくらい続くのかを勘案して、水の中にダイブしよう。気持ちよいものではあるが、長くなるとしんどい。

自然を相手にしてのことなので、タイミングを考えようといっても水の中に入らないとどうしようもない場面はいくらでもあるだろう。そのあたりも考える必要がある。

大腿までしか入っていないが、すでに少し体温が奪われていた。

全身濡れてからの行動時間は短い。全身を濡らすと太ももまで濡らしていたときと段違いに体温が奪われる。10分足らずで寒さを感じるまでに冷えた。

気持ちよさと寒さはトレードオフなのかもしれない

寒さでの身体能力の低下が感じられた。スポーツでよりよいパフォーマンスを行うためにはウォーミングアップをして身体を温める必要があるのは周知のことだろう。

身体を温めるとよい身体運動ができる。冷やすとその逆である。いつもより身体の動きが鈍く感じられ、バランス能力も著しく失っているように感じた。

思ったより身体能力が低下したので、やはり通常の登山は余裕でこなせるだけの体力がなければ、低下した身体能力の中、登り続けるのは難しいと感じた。

そして一度奪われた体温はなかなか戻らなかった。8月の標高1000mに満たない山にもかかわらず、下山するときまで、上着を脱ぐことはできなかった。

溺れるリスク

足がつって沈む可能性がある。体温が奪われるとふくらはぎ等がこむらがえりする可能性がある。そのタイミングで息が続かなくなり、溺れるという可能性もあるだろう。

水流がある。プールとはわけが違う。身体を動かしたままの形で進める訳では無い。水流も溺れるリスクになりうる。

水流のあるところをうまく進んでいく。

滝壺には複雑な水の流れがあり、それを上手く読まなければならない。水流に逆らって進んでも全く進めない。逆に水流を味方につければ楽に泳げるだろう。

溺れるリスクはそれなりにあると思う。ライフジャケットやリュックに浮くものを入れておくと好いのではないかと思う。

行動時間のリスク

移動速度が遅く、想定外に時間がかかる。水の中を進むだけでも歩行速度は遅くなる。それに加えて、沢の中は岩がゴロゴロしていて、さらに登りである。

岩と水の間を進んでいくのは容易ではない。

通常の登山道でも平地を歩くときより、歩くスピードは落ちるが、それ以上に沢を歩くときはスピードが落ちる

コースタイムといった基準になるタイムもなく、登山以上に個人の能力差が出るように感じるので、先人たちの情報も盲目的に信じることはできない。

沢を登るときはかなり余裕の持った計画で進みたい。さすがにここまではかからないだろうというような時間が落とし所だろう。

単独の入渓のリスク

単独行は危険だ。これは単独行者の根本的な課題である。通常の登山でも避けるべき行為である。しかし基本的に一人で行動する人間にとってグループ登山は至難の業だ。

グループで登れば上で挙げたリスクを回避できる可能性が高い。滑落による骨折や低体温による行動不能、溺れることなどに他のメンバーが対応することができる。

単独行はそのようなリスクが起こらないように、徹底的に準備していくべきであり、万が一危険な状態になっても生き延びる対策は必要だ。ここではその準備については詳しく触れないが、相応の覚悟ほしい。

それでも単独行には大きな魅力がある。それは山をより愛でることができことだ。グループで登る時には得られない充実感を得ることができる。

単独行に関して僕の好きな言葉がある。「不死身の加藤」呼ばれた単独行者、加藤文太郎は著書『単独行』の中で以下のように書いている。

何故なら友とともに山を行くときは時折山を見ることを忘れるであろうが、独りで山や谷をさまようときは一木一石にも心を惹かれないものはないのである。

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改善点

実際に沢を歩いてみて気づいて、すぐに改善できる点があったので、次回以降に生かしたい。

入渓地点を見極めること

沢の上流部は工事の手が入っていない可能性が高いが、沢歩きを始める場所は堰堤が多い場合がある。堰堤があれば横から高巻きをしていけば問題はないのだが、多すぎると面倒くさい。

ここは右側に高巻きの道があった。

歩ける林道や登山道があれば、堰堤が多い部分は避けてから沢をあるき始める方がよいだろう。

地形図には堰堤の地図記号があるので、それが多めのところは避ければよいが正確にすべてがあるわけではないので参考程度に考えておくとよいだろう。

地理院地図 電子版より

上の図の赤丸の川の中にある記号が堰堤を表している。今回通った元越谷は林道が並行していたので、好みの地点で入渓することができる。

僕はこの地図のさらに左(西)側から入渓したが、右側の574m地点あたりから入渓してもよかったと思う。

沢登り用のウェアを着る

当然のことながら、専用の衣類が存在するには理由がある。その存在価値を実感した。水に濡れても急激に体温が奪われないようにワンクッション挟むような形で、体温を維持してくれるようである。

沢登り用のウェアについては調べてみて、よさげなものを購入しようと思う。

砂が靴下の中にまで入り込む。

特に短めの靴下で、くるぶし付近で足首と密着していない靴下だと砂がそこそこ入り込んでくる。僕は地下足袋で歩いたが、隙間から砂が入り込んで少々不快感があった。長めの靴下を着用していれば何ら問題はなかっただろう。

楽しみ

いろいろ書いてきたが、リスクを踏まえた上でも楽しいから登るのであり、それ以外のなにものでもない。

運動系

沢登りはただ歩くだけとは違う楽しさがある。リスクや必要な能力で挙げたところがそのまま楽しさにもなる。

通常の登山では普通に歩くだけであるが、沢の中でもどのあたりを通っていけば上手く進めるか、どの岩を超えれば歩きやすいかなど、考えることが多い。

沢の中を進んでもよいし、右から行っても左から攻めてもよい。

初心者だからということもあるかもしれないが、登るときにする選択の多さは通常の登山よりもはるかに多い。

全身を使って山と対峙できる。特に手を使えることが大きいと思う。普通の登山であれば、手を使うのは岩場や鎖場だけで、それと遭遇できるのは長い行程のほんの一部だ。

沢登では選ぶ沢にもよるが、手を使うところが当然のようにあり、複数箇所で楽しむことができる。手を使うことがおまけではなく、メインとして出てくる。

泳ぐのは楽しい。通常登山とは結びつけて考えられないことであるが、沢は泳ぐことができる。これは面白い。水の流れは急で気をつける必要はあるが、上手く泳げたときは楽しい。

より変化に富んだ道を歩くことができるのが、沢登りの大きな魅力である。

自然系

沢の水は冷たい。平地の川は太陽光で温められている。また上流にダムやため池がないと水の温度が冷たくなる。

すっきりと頭を冴えさせるような冷たさ。入ってみると全身がキリッと気持ちよくなる冷たさがよい。

沢の水はきれい。目からも我々を楽しませてくれる。沢によって色が異なる。青みが強い沢や緑が濃い沢など、それぞれの美しさがある。その中を歩き続けるのは目の保養として優れている。

滝に打たれる。滝を見つければ打たれて修行するのが古来からの人類の嗜みだろう。水量の多い滝はかなり痛い。また水量は少なくても水は冷たい。

せせらぎの音がよい。我々の耳も楽しませてくれる。水量が多いところでは圧倒されるような水をの音に畏敬の念をいだき、水量が少ないところでは静かに流れる水の音に心が落ち着く。そして沢を詰め上がり、風の吹き抜ける音に耳をすませる。

だんだん穏やかになる水の流れを愛でる。登っているときにはあまり感じられないが、だんだんと水量は減ってきて、川幅もだんだん狭くなってくる。

大きな川の水も小さな沢から、一滴の水から始まっているのだなと感じることができる。

山との一体感を味わうことは登山の楽しみの一つであると思う。山に登ったり、山でテントを張って寝たりすると山と一体感を味わうことができる。その一つとして沢登りがあると思う。

日本の西洋登山黎明期の登山者の田部重治は、絶対に山で寝るべきと書いたあとに次の文章を残している。

そして山その物と自分というものの存在が根柢においてしっくり融け合わなければならないと。

山と溪谷 田部重治撰集 (ヤマケイ文庫) kindle位置2934

沢登りは宿泊をせずとも、山の中でも奥深く、谷の深いところを歩き続けるので普通に山に登るよりも強く一体感を楽しむことができると思う。その点で山との融合という感覚を得やすいと思う。

そしてシンプルにすごい景色を見せてくれる。沢を歩くことでしか見れない景色もある。通常の登山道では歩くことはないところも歩くので、よく歩いた山域でも新鮮な気持ちで登ることができた。

ルートを色々選べる。登山道がないところでも沢を登れば歩いていける。一つの山域をより深く楽しむことができる。登山道は道が限られるが沢は無数にある。

総括

レベルの低いところで沢登りを楽しんでいきたいと思う。今後は気分次第でさらに高いレベルのところにもいってもよいかなと思っている。そのためには色々と準備をする必要がある。

紹介したリスクと改善点は沢登りを楽しめる最低限のレベルでのものである。入門として沢を楽しむには十分かもしれないが、快適に、より安全に沢を登るにはまだまだ不十分であることは自覚している。

沢登りは山登りの方法の一つとして、今後も楽しんでいきたい山行方法になった。

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