エコーライン閉鎖後の乗鞍岳に三本滝から登る

北アルプス

2022年11月12日(土)に登ってきた。乗鞍岳の畳平に通じるスカイラインとエコーラインは例年10月末に閉鎖される。バスで山頂付近まで近づけなくなるため、登山者が少なくなることを期待して登った。

期待通り登山者はそれほど多くはなく、静かな乗鞍岳を味わえてとてもよかった。その乗鞍を味わおうとする単独行の人がちょくちょく登っていて、同業者の匂いを感じた。

天気がよく北アルプスの山々も一望できて、とても満足した。

雪が降り始める季節なので、積雪状況が日によって変化があるので色々な状況に対応できる装備が必要になる。

僕が登った日は登りはアイゼンなしで登頂して、下りは滑りやすそうだったので、軽アイゼンを装備した。

誰にオススメするコースか

今回は積雪があり、コースタイムは9時間を超えるので山に慣れた人にオススメする。バスが運行している間の休日は混雑するようなので、混雑を避けた登山が好きな人にオススメする。

この日登っていた人数は20~30人ほどだったかと思う。これは百名山にしては少ないのではないかと思う。

・十分な体力がある人
・混雑を避けて乗鞍岳に登りたい人
・途中に車道を歩いても気にならない人

途中何度もエコーラインの舗装路を歩くところがあり、少々がっかり感がある。それを気にせずに登れる人にオススメのコースだと思う。

駐車場

三本滝レストハウスの駐車場を使用した。お手洗いが整備されていて、登山を開始する場所として使いやすい。

2022年11月12月(土)のAM6時ごろでも駐車場には余裕があった。

車中泊をしているのか車のエンジンをアイドリングしている車があって、静寂というような状況ではなかった。

夜が開け始める

2022年11月12日の午後2時頃の様子は下のような感じで、かなり空いている。

夜明け前はわかりにくかったので、昼の写真も載せる。

三本滝の駐車場から先は常にマイカーは規制されていて侵入できないようになっている。11月からはバスの運行も停止するので、登山者は平時に比べてかなり少なくなる。

登山コース・コースタイム

今回は三本滝の駐車場から剣ヶ峰までを往復した。

三本滝までの往復は分岐から20分程度、位ヶ原までは2時間20分、肩の小屋までは2時間5分、剣ヶ峰までは45分の登り5時間10分を歩く。下りは4時間で往復で合計9時間10分の行程になる。

標高差

標高差1200mを登る。

三本滝レストハウス(標高1800m)→剣ヶ峰(標高3025.7m)

標高差が1000mを超えてくると中級者以上でないと登るのは難しい。例え登れたとしても苦行になってしまってはもったいないと思う。

加えて今回は積雪のあるところを登ったので、標高1200m登ることができる体力にプラスして、雪の上を歩く余力も必要になる。

僕はAM6時前に登山を開始した。この時間に出会うのは単独行の中年男性ばかりで、山男が集う山みたいで面白かった。彼らも僕と同じで人の少ない乗鞍を狙ってきた同志のように感じた。

昼が近づいてくると2人組や女性も登っていたので、別にそうではなかったのかもしれない。今回はグループ登山者とは出会わなかった

三本滝駐車場に向かう道から撮影。乗鞍の大きさがわかる。

疲労度・危険度

毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。

疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。

疲労度★★★
危険度★★★

疲労度については9時間を超えるコースタイムになるので、一日中は余裕で歩ける体力が必要だ。余裕でというのが大切で、余裕がなければせっかくの登山がキツいだけでつまらなくなってしまう。

積雪もあるので、9時間を余裕を持って歩けそうだと思える人に登ってほしい。

危険度については登山道としては平易な道が続くといった印象だった。

今回は積雪があり滑りやすいので★を3つにしている。今回僕は登りは軽アイゼンなしで登っているが、確実に装備していた方が安全に登れたと思っている。

今回の山行の積雪と雪質であれば、軽アイゼンもしくはチェーンスパイクで十分対応可能だった。ゲイターは持っていたが、積雪は浅く使わなかった。

また状況に応じては12本爪のアイゼンも登場させようと思っていたが、リュックを重くしただけで使う機会はなかった。しかし余裕を持った装備は大切だと思うので、いろいろな状況に対応できるように準備したい。

登山コース

三本滝レストハウスから出発する。夜明けとともに出発するのは久しぶりだった。少々暗い道を進んでいく。だんだんと明るくなる雰囲気はいい。

この時間は風がなく、硫黄の匂いが充満していて臭かった。バイクで三本滝の駐車場に向かっているところから匂いを感じた。

三本滝駐車場→位ヶ原山荘 コースタイム2時間20分

ここから三本滝までは観光用の道といった感じで、登山道よりも一段階歩きやすい。一旦下って橋を渡ってから登る。

乗鞍岳への登山道と三本滝への分岐に到着した。せっかくなので、三本滝に向かってみる。往復で20分程度かかる。三本滝とはどんな滝なのだろうか。楽しみになってきた。

三本滝は名前の通り、三本の滝がある。それぞれの沢の地質が違っていて、岩の色が違うのがおもしろい。

右はクロイ沢を流れる滝だ。黒い岩が特徴的だからクロイ沢。わかりやすくていい名前だと思う。

乗鞍岳への登山道への分岐に戻り、本格的に登山を開始する。三本滝のある沢の橋を渡ったら、急な登りが始まる。

急斜面につづら折りで作られた登山道をひたすら登っていく。東に見える朝焼けがきれいに見えて、夜明けとともに登り始めるのもいいなと思った。

ついに朝日が出てきた。もう少し開けたところで朝日を拝みたかったけれども、仕方がない。樹林帯の中でも朝日はきれいなコトには変わりはない。

三本滝から乗鞍岳へは西へ進んでいくので、東から登る太陽を背に登っていく。

背中が照らされているので眩しくはない。

登山道は整備されて歩きやすい道を進む。

霜柱が立っていてザクザクと踏みつけると楽しい。

亜高山帯はシラビソの森が広がっていて、基本的にいい匂いがするが、今回は硫黄臭くシラビソの匂いが楽しめなかった。風があれば特にシラビソの匂いを楽しめるだろう。

しばらく登ると乗鞍エコーラインと合流をする。人によっては登山道の途中で車道に出るのは、興ざめだと感じるかもしれない。

車道のほうが登山道よりも歩きやすいと思いながら進んでいく。山頂の方向には乗鞍のピークがいくつか見えてきた。

さらに登っていく。肩の小屋口登山口までは、車道と何度も合流をする。

車道から見える景色は美しいので見逃さない。東への景色を眺めると、浅間山が見える。そして浅間山にの手前にいくつもの尾根が並ぶ。この地方の山深さを感じる。

遠くに行くほど白く見える山並みが味わい深い。

登山道と車道のエコーラインの合流地点は急に現れる。1、2回見落として登山道を行く道を通り過ぎてしまった。

登山道に入るところは赤いペイントがあったりするので、見落とさないように気をつけて歩いた。

赤い矢印の通りに進む。

位ヶ原の山荘に到着する。結構な頻度で車道と合流するので、深い山の中を歩いているという気はあまりしない。

位ヶ原山荘→剣ヶ峰 コースタイム2時間50分

位ヶ原の山荘を超えるとダケカンバの林が広がり、森林限界の近さを感じる。高い山に登るとハイマツ帯の直前にダケカンバの林が広がる。

ダケカンバをみるとやっとここまで登ってきたという思いと、森林限界以降のひらけた景色に期待が高まる。

ダケカンバとともに雪のあるところが多くなる。ところどころアイスバーンのように固まっているところもあり、それを避けて登っていく。

雪はそれほど深くはなく、アイゼンは使用せずに登る。

肩の小屋口登山口まで到着した。ここで一息入れた。道路が通っているとはいえ、閉鎖されているので、車は通らないので静かでよい。

車が通らない道路は、それはそれで乙なものである。

ここまでくると乗鞍の頂点、剣ヶ峰がだいぶ近く感じる。そして乗鞍岳の大きさを感じる。

剣ヶ峰は乗鞍岳の最高点ではあるが、ピークの一つにすぎない。そう感じるくらいの大きさがある。

肩の小屋に向かって進んでいく。ここからは常に積雪があったが、雪は浅く、先行者の足跡があった。

ここからもアイゼン等も装備することなく登っていった。少々滑りはするものの危険を感じるほどではなかった。

面倒なので持っていた軽アイゼンは登りでは装備しなかったが、雪が積もっていれば、なるべくアイゼン等は装備するようにしたい

登山道に安全なところはなく、どこでも転倒、滑落の危険性があることを肝に銘じておきたい。

空の青さと雪の白さが美しい。

肩の小屋に到着した。小屋の窓等はすべて閉鎖されていた。ここでも一休みして山頂に向かう。

今回はよく晴れていたとはいえ11月なので、そこそこ寒かった。休憩は風の当たりにくいところにいた方がよかった。

少々冷えた身体で山頂に向かうことになった。

山頂に向かう。ここまで来れば後少しな気もするが、まだここからが長い。

ここで焦って歩みを早めてしまうと、息が上がってしまい、進むペースが遅くなってしまう。

息が上がりすぎないように、焦らずに、ゆっくり、一定のペースを守って登っていく。

登りは特に急なものではない。ザクザクと雪を踏みしめて進んでいく。

空が青く、雪が白く、岩が黒く、葉が緑、この4色を堪能する。

そこそこ登って後ろを振り返る。摩利支天方面の向こうにも高地は続いているのだろう。

乗鞍の大きさをまた感じた。

今回は三本滝から登っているが、畳平までバスで登ってきても、山歩きを十分に楽しめる懐の広さが乗鞍岳にはある。

わざわざ人を避けた時期に登ったが、夏のバスに乗って登ってもいいかなと少し思った。

雪の上を進んでいく。尾根に遮られているからか、風はそれほど感じない。

雪がキラキラしていてきれいだった。ただし日差しと雪面に反射した光で眩しい。

一応サングラスをしていたが、サングラスはつけていて正解だった。帰宅してから鏡をみると、サングラスのない部分は日焼けをそこそこしていた。

今回は山頂付近だけが雪原になっていただけで、眩しいところで長時間晒さらされてなかったので、サングラスなしでも日焼けはするが登れただろう。

長時間雪原を歩くと、雪盲という目の障害が発生するので、サングラスは忘れずに持っていきたい。

登っていくと剣ヶ峰が見える。三本滝からの登ってくるときに見えた剣ヶ峰は柔らかい印象を受けたが、ここからみると確かに尖った感じで、剣ヶ峰という名前がふさわしい。

山頂直下は少々急な登りだったが、長くは続かない。一気に登って山頂に到着!

鳥居があるのは剣ヶ峰が乗鞍本宮だからで、お参りを済ませる。

北アルプスを一望できる。

御嶽山をアップで撮る。あれほどデカい山は他にはない。誰が見ても御嶽山だとわかるだろう。

御嶽山の山頂は標高3067mで、乗鞍岳の3026mと40mほどしか標高差はない。

離れているにもかかわらず、標高差が少ししかないのは不思議でしかない。

雄大。

山頂からは北アルプスの面々が見える。槍穂の連嶺が美しい。

日本の登山シーンのハイライトがそこにはある。

中央が奥穂高岳、左が槍ヶ岳。

山頂から権現池と飛騨高山方面をながめる。高山方面は一部霧が発生しているようだ。

権現池は氷はじめたところだった。高地にある池は神秘的でとてもよい。

なにかが権現しても不思議ではない。そんな気持ちにさせる。

奥宮の裏にも宮がある。よくわからないが、手だけは合わせておく。

登ってきた三本滝のある乗鞍高原の方を眺める。上から見るとかなり緩やかに感じる。

乗鞍高原もまあまあな坂かと思っていたが、ここからみると高原なのだなと納得した。

下ったら高原でのんびりしたい。

乗鞍岳から南に向かう道があるが、あまり歩かれていないようだ。

大日岳の手前で道は分岐していた。大日岳は乗鞍本宮の奥の院になっていて、どうやら立ち入り禁止らしいので引き返す。

剣ヶ峰→三本滝駐車場 コースタイム4時間

下山を開始する。登りはアイゼンなしで登ったが、下りは滑りやすそうだったので、一応軽アイゼンを装備する。

12本爪のアイゼンも念のため持参したが、リュックが重くなっただけだった。

流石に軽アイゼンを装備すると滑りにくいが、積雪量はそれほど多くはないので、雪がない部分もある。

アイゼンは雪のある部分では大活躍するが、雪のない部分は歩き辛い。今回使ったアイゼンは以下のモノ。

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雪と岩の道をどんどん下っていく。

同じ道を下山する。登っているときは目の前に見える山頂ばかりが気になっていたが、下りの方向へ景色がひらけていてよかった。

ハイマツの間で水はないが、沢のようになっている部分を下っていく。

ところどころ、水だまりがそのまま氷ったようなところがあり、滑りやすく丁寧に歩いた。

ハイマツ帯を過ぎるとダケカンバの林が広がる。すでにダケカンバの葉っぱは散り、冬の装いをしている。

こうしてみると、ダケカンバ帯は横への広がりはあるものの、標高差的には縦にそれほど続いていないのだなと気づく。

後もひたすら登ってきた道を下る。

登りは薄暗くよくわかっていなかったが、シラビソなどの亜高山帯の樹林は美しい。

またシラビソの匂いは甘く、とても心地いい

登りは硫黄が滞留していて臭かったが、この匂いだけを楽しめてよかった。

三本滝の駐車場に到着後、乗鞍高原をバイクで駆け抜ける。

紅葉したカラマツの間を抜ける道が気持ちいい。乗鞍の山頂に登らずとも、高原をブラブラと逍遥するだけでもとても楽しいだろう。

今回もお疲れ様!

総括

乗鞍岳はスケールの大きな山で車道が通ったからといって、通俗化する山ではないとのようなことを深田久弥は書いているが、やはり車道は少なからず気になった。

とはいえスケールの大きな山というのは間違いない。今回は剣ヶ峰山頂だけを目指して登ったが、剣ヶ峰に登頂することはそれほど意味のないことなのではないかと思えてくる大きさがある。

山頂付近は広大で1日中歩いても飽きはしないだろう。それほどの魅力にあふれる山だと感じだ。また登りたい山である。

また今回は僕は自宅を0時過ぎに出発して23時頃に帰宅するという強行スケジュールで登山した。

睡眠時間を削って登るのはよくないと感じた。感受性を鋭く保っておき、深く山を味わうには脳機能を十全にしておく必要がある。

登山の楽しみは登る前から始まっている。準備は抜かりなくしようと思った。

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