2月20日に鈴鹿山脈の竜ヶ岳に遠足尾根から登ってきた。鈴鹿山脈を離れた三重県側は晴れているが、鈴鹿山脈の主稜線上には雲がかかっていた。
登山者は少なくないので、雪の登山道のトレースは踏まれていて歩きやすい。山頂付近はアイスバーンになっている部分もあるので、滑りやすいので慎重に歩くことを求められる。
また山頂は風が猛烈なので、体温とバランスが奪われる。十分な装備が必要である。
装備は軽アイゼンで登ったが、不十分である。前爪のあるアイゼン、ピッケルを装備するべきである。また風が強く、顔に当たる雪が痛かった。ゴーグルも装備すべきである。
よくいわれるように山の天気は変わりやすい。最低限の装備では、いずれ必ず危険な目にあう。余裕を持った装備で登るようにしたい。
登山者の多さ | 多くはない |
駐車場 | あり(車500円) |
お手洗の有無 | あり(駐車場) |
コンビニ | なし (最寄りは5.5km先) |
温泉 | 阿下喜温泉(駐車場から8.7km) |
誰にオススメする山か
積雪のない竜ヶ岳はそれほど難易度の高くはない山である。積雪などの気象条件によっては、危険性が跳ね上がるので注意が必要である。
積雪も新雪、残雪によってコンディションが大きくことなるので、よく下調べをしてから登るようにしたい。
今回の評価は積雪時に限定する。少なくない人が登っているので、トレースが比較的ついている場合が多い。ラッセルになる可能性は低く、雪山に何度か登っている人であれば問題はなく登ることができるだろう。
・雪山の練習をしたい人
・雪で純白のシロヤシオを見たい人
・風耐性がある人
山頂付近にシロヤシオと木があり、5、6月頃に白い花を咲かせる。その白い花を人は羊と呼ぶ。冬は霧氷によって真っ白になる。本当の羊がここにいる。
竜ヶ岳は風が抜けやすい地形なのか、非常に強い風が吹く。常にというわけではないと思うが、生半可な覚悟では立っていることもできない。風が荒れることも頭に入れた上で登るべきである。無理は禁物である。無理せず撤退する勇気を持ちたい。
駐車場
麓の宇賀渓キャンプ場近くの、竜ヶ岳駐車場に停める。料金は自動車500円、バイクは200円である。40台以上駐車できるが、人気の登山口なので満車になる可能性がある。早い時間に行くことが望ましい。
駐車場に駐車すると建物の中から係の人が出てきて、料金の回収をしてもらえる。
登山コース・コースタイム
今回は宇賀渓の駐車場から遠足尾根で山頂に至り、金山尾根で下山をした。
竜ヶ岳 / ずんやまさんの竜ヶ岳(三重県いなべ市・滋賀県東近江市)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
標高差
駐車場(標高240m)→竜ヶ岳山頂(標高1099m)
標高差約850mほどを登る。鈴鹿の山ではスタンダードな部類の標高差である。標高差300mを超えてくると初心者はキツいので、オススメできるのは中級者以上の登山者になる。
コース次第で登りはかなりの急登になる。中道、金山尾根は常に急登である。つづら折りの続く遠足尾根はいくらか急登はラクである。
コースタイム
今回は遠足尾根から登り、金山尾根から下った。宇賀渓からは3つのルートがある。
登り:3時間20分(遠足尾根)
下り:2時間30分
コースタイムはあくまでも目安である。
合計5時間50分のコースである。そこそこ歩く必要があるので、山に何度も登って山に慣れた人が登ることを推奨する。
金山尾根(最短)で往復する場合。
登り:3時間、下り:2時間30分、合計:5時間30分
最短とはすなわち、急な登りである。急登が好きな方は選択するとよい。むき出しの岩がところどころに姿を見せる少々スリルを感じられるコースである。
遠足尾根で往復
登り:3時間20分、下り:2時間30分、合計:5時間50分
遠足尾根の真骨頂はあとで紹介する、開けた稜線歩きが楽しめる点である。ただし稜線にいたるまでの植林地帯を歩くのは少々、つまらなく、骨が折れるだろう。
中道で往復
登り:3時間15分、下り:2時間50分、合計:5時間55分
登ったことがないので参考までに記載する。
疲労度・危険度
毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。
疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。☆は★の半分。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。
疲労度★★
危険度★★★☆(暴風注意)
疲労度について
800mの標高差を登るので、中級者以上の体力が必要である。積雪もあるので、さらに雪のない季節に余裕を持って登れる体力であることが望ましい。
適切なペースで登らないとかなり疲れる。急登が続くので、いかにオーバーペースにならないように一定のペースを守れるかが肝である。
危険度について
今回は積雪があるので、雪のない季節よりも危険性が高い。また風が強い。特に山頂付近が風が非常に強い。立っていられないほどの風が吹いていた。油断をしていると一気に体を風に持っていかれる。
雪が滑る。これも特に山頂の周辺はアイスバーンが発達しているところがある。アイゼンの爪をしっかり刺しながら進まないと滑落の危険性がある。
風と雪があいまって危険性がかなり高い。風にあおられてバランスを崩し、凍った地面で足を滑らせる。そして急傾斜を一気に滑落する。油断が即、死につながる。
登山コース
今回の登山道は常に雪が残っていた。途中から軽アイゼンを装備して登った。
宇賀渓駐車場→竜ヶ岳山頂(遠足尾根)
最初は舗装路の林道を行く。20~30分ほど歩くと本格的な登山口に到着する。
遠足尾根へ入る登山口は看板があるので見落とすことはない。ここから登山道に入る。
そのまま舗装路を進めば、金山尾根、中道登山道のへとつながっている。
杉林の中を縫うように走る、つづら折りの登山道をひたすら登る。「さっきも見たような道だな」というとこと何度も繰り返す。杉林の間から見る空は確実に高くなっているので、標高を稼いでいることは実感できる。
雪の積もった杉林は美しい。杉林の登山道を嫌う人も多いかもしれないが、うるわしい瞬間もあるので、見逃すのはもったいない。
杉林を抜け、落葉広葉樹林帯にでる。少々見晴らしがよくなり、先行するスノーシューを履いた集団を視界にとらえる。
予想通り先行者がいるので、トレースをたどるだけの比較的ラクな雪道である。
樹木が少なくなる直前で4~5人のスノーシュー集団を抜く。先行しているのはワカンの登山者のみである。
遠足尾根の魅力はは樹木が少なくなって、展望が開ける稜線歩きであるが、今回は視界はほぼゼロである。ホワイトアウトにならないよう祈りながら進む。
しばらく進むと前からワカンの人(以降ワカンさん)が歩いてきた。「山頂まで行きますか?」と問われたので、「山頂まで行きます!(当然やろ?)」と答えた。ワカンさんはどうやら途中で引き返してきたらしいが、僕が山頂に向かうので一緒に向かうことになった。
なぜ途中で戻ってきたのか、聞いた時点ではわからなかったが、すぐにその答えがわかった。風が強すぎる。山頂に近づくにつれて強くなる。
基本的に開けた稜線を歩くが、たまに樹木がある。樹木は風よけに使える。稜線の雪は風で飛ばされているところはあまり深くない。風があまり当たらない部分は雪が深く歩きにくい。
白い花を咲かせて羊と呼ばれる竜ヶ岳のシロヤシオであるが、今回は霧氷によって羊になっていた。これはこれで美しい。
また山頂へ向かっていると山頂から下ってきた人とすれ違う。「山頂は風が強すぎる、トレースはつけてきたけどすぐに無くなるから気をつけて。」というアドバイスをいただく。
すでに風が強いと持っていたが、山頂はここの比ではないらしい。怖いもの見たさの好奇心がくすぐられる。
山頂直下の急坂を登る。ここの雪はかなり固まっており、一部アイスバーンのようになっていたので少々注意が必要だ。ここでバランスを崩してコケると急勾配なので、一気に滑落して大事故につながる。
今回の山行に最も命の危険を感じた場所である。
山頂付近は立って歩いていられないほどの風が吹いていた。確かに山頂付近は格段に強い風が吹いている。体勢を低くして風をしのいで、少しずつ進んでいくことしかできなかった。
強い風の中でも時折、さらに強い突風が吹く。その時は座ったりして、やり過ごすしかなかった。
前爪アイゼンとピッケルの必要性を感じた。アイゼンとピッケルで体の安定を保ち、もし、風にあおられて転倒した場合にはピッケルで停止姿勢をとる必要がある。
正当な装備でないとカンタンに滑落して死んでしまう。強く実感した。
山頂
ゼロの眺望だった。
山頂は暴風が吹き荒れており、長居ができなかった。風から隠れるところがないので、一気に体温が奪われる。当初は中道から下山しようと思っていたが、道を探す余裕がないので登ってきた道を戻る。
山頂にはほとんど雪が積もっていないところ見ると、常に強い風が吹いていると予測できる。竜ヶ岳の山頂付近に木々が生えていない一因であると思った。
竜ヶ岳山頂→宇賀渓駐車場(金山尾根)
金山尾根と遠足尾根の分岐から遠足尾根方面を見る。遠足尾根は晴れていると開放感があり、非常によい登山道である。
金山尾根との分岐手前から遠足尾根を見る。遠足尾根は木々が少なく、晴れた日は気持ちのよい登山道になる。今回は視界がガスでほぼゼロだったので、どこに進んでいるか、進んでいるかさえもよくわからなかった。
竜ヶ岳の山頂が姿を現しそうで現さない。こういうときは粘っても見れないので、諦めて帰る。白く美しい山体の全容を見たかった。
木々の間を抜ける。枝についた氷が美しい。サクサクとした雪の上を進んでいく。
爽快感のある下りを進む。急傾斜に気をつけながら、伊勢湾まで見渡せる開放感が楽しい。
金山尾根は距離が短い分、かなりの急坂である。雪に身をまかせながら滑るように下っていく。ここから登るのはかなりの脚力が必要である。
岩があったり、変化に富んだ登山道である。遠足尾根の杉林より歩きごたえがある。
木々の間を抜けていく。これくらいの雪の深さになるとアイゼンをはずしているので、滑らないように気をつけて下る。
青い魚止橋を渡るとほとんど登山道は終了である。もう少し歩くと渡渉のような橋を渡り、舗装路へと出る。
総括
途中から同行したワカンさんから帰り際に「死ぬかと思ったね」と声をかけていただき、「身の危険を感じました」と返答した。本当にそれほどの風であった。
山頂付近の平均風速は大体20m/s~30m/sぐらいで最大瞬間風速はそれ以上というような感じである。あくまで個人的な感想である。
気象庁の基準で暴風は「風速が20m/s以上」、猛烈な風は「風速がおよそ30m/s以上、または最大瞬間風速が50m/s以上」である。実際に風速計を見ながら風を体験したことがないので、なんともいえないが、少なくとも暴風ではあったと思う。
80km/hで走ると約22m/sの風、100km/hでは約28m/sの風と同等である。バイクでいつも体験しているレベルの風ではあるが、歩いているときに受ける風は、勝手が違った。
気象条件によって雪山の難易度は極端に変わる。最低限の装備でも条件のよい日は問題なく登れる。山の天気は急に変わる。何度も雪山に登っていると最低限の装備では足りないタイミングが必ず来る。
雪山には十分な装備で登るようにしたい。
ちなみに2月20日の12時の天気図を参考までに引用する。
典型的な西高東低の冬型の気圧配置であり、等圧線が南北に何本も入っており、西からの強い風が吹いていることがわかる。別の日も似たような天気図が多いので、冬の間はほとんどいつも竜ヶ岳では暴風が吹いていると予想できる。
風がおだやかな日を狙うなら、等圧線が密になっていない日を狙うべきである。
おまけ動画。参考までにどうぞ。
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