2022年8月28日の記録だ。今回は鈴鹿山脈の元越谷へ沢登りに行った。元越谷は水沢峠にへと続く谷で、野洲川の支流である。
ルートとしては野洲川の主流から分岐を少々林道で入った先のゲートから、林道ゲート元越谷→小岐須峠→宮指路岳→水沢峠→林道ゲートという順に周回した。
僕は今回初めての沢登りをする。沢歩きや沢沿いの登山はしたことがあるが、沢をメインにして登るのは初めての試みで楽しかった。
以下は初めての沢登りを単独行で行った沢登りの記録だ。初心者でも登れる沢で特別な装備は必要ないが、ヘルメットなど最低限の装備は必要である。軽い岩登りや泳ぎあり、沢登り体験するにはもってこいだと思った。
宮指路岳は人の多くない静かな山であるが、岩が重なった奇観が楽しめるオススメの山である。沢を経由せず普通に登ることもオススメだ。
誰にオススメする山・沢か
今回は沢登り初心者でも登れる沢を調べて、グレード1級上(初級)の沢を選択した。1級、1級上であれば、初心者でも遡行できるらしいので問題ないと判断した。
泳ぎも、岩登りも難易度は高くなく気軽に楽しめる沢だと思うが、沢が初めての人は緊張感を要するところがあった。
・沢登りが初めての人
・沢で泳いでみたい人
・手軽に沢を楽しみたい人
沢登りになれた人であれば、なんてことのない沢かと思う。
注意点
沢登りは通常の登山と比較すると難易度がはるかに高くなる。それは難易度の低い今回の沢であっても同じだ。登山道をたどるだけでよい通常の山歩きとは異なり、自分で道を探し、手足を使って登っていくという難しさがある。
なのでまず大前提として登山の経験をそれなりに積んでいる必要はある。
登山も未経験の方が単独での沢登りをすることは避けたい。また登山の経験者であっても初めての沢登りを単独行で行うのは極力避けたほうがよい行為ということは覚えておいていただきたい。
つまり今回の僕の単独行はあまり褒められた行為ではない。既存のコミュニティの中に入っていくのが苦手な人が十分な準備をした上で、沢登りを試してみる際の参考になれば嬉しい。
危険なところには踏み込まないこと、難しいところは高巻きをすること、進路がなくなった場合は撤退することを前提に登ることを決めた。
駐車場
鈴鹿スカイライン(国道477号)から林道への分岐があるので、未舗装路の林道を進んでいく。道はかなりボコボコになっているところがあるので、車高の低い車が走るのは厳しい。
以下の地図のところに駐車場はなく、もっと手前にゲートがある。下を目指して途中の駐車スペースに車を停めればよいだろう。
鈴鹿スカイライン(国道477号)から林道に分岐して、少し進むと閉鎖されているゲートがあるので、その手前に駐車することができる。そのスペースが満車だとしても手前に路肩のスペースがあるところがいくつかあるので、そこに駐車することはできる。
登山コース・コースタイム
今回の歩いた軌跡は以下の通りだ。本当はもっと水沢峠に近いところにつめ上がる予定だったが、滝を登ることを回避したので、宮指路岳に近いところに出ることになった。
参考までに僕の山行時間は8時間30分ほどになった。初の沢登りでペースがかなりゆっくりだったような気がする。余裕を持った経過で歩いてほしい。
標高差
駐車場(標高430m)→宮指路岳(標高946m)
今回の最高点は宮指路岳だ。名前の由来は標高946(クシロ)mだからという安直な名前だが、味のある漢字が当てられている。
今回は沢を登るので標高差500mといっても全くあてにならない。沢の様子によって難易度が全く異なるからである。
登山道を歩けば特に問題のない山であっても沢から登るのであれば、十分すぎる余裕を持って登りたい。
疲労度・危険度
毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。
疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。
疲労度★★★
危険度★★★★
疲労度については8時間以上の行動時間になったので、そこそこの疲労感はある。通常の登山で1日中歩いても平気なくらいの体力は必要だ。
8時間以上というのは僕の行動時間で個人差があるので何ともいえないが、沢の歩行は通常の登山よりもはるかに進むペースが遅くなる点に注意されたい。
危険度については★4は通常登山の最高難度、★5は通常登山の難易度を超えるものとして僕の中での基準を決めている。
なので今回は一般登山道では最高難度と呼ばれる剱岳の別山尾根と同等程度の危険度であると感じたので、★4としている。
別山尾根の危険度については感じ方の個人差が大きいので何ともいえないが、あまり危険でないという人もいるとは思うが、別山尾根は十分に危険な道だと僕は考えている。
元越谷は剱岳の別山尾根ぐらいの危険度に感じたので、十分に注意をして登っていただきたい。
登山コース
林道ゲート→元越谷→小岐須峠→宮指路岳→水沢峠→林道ゲートという順に周回した。
林道ゲート→元越谷→小岐須峠
まずは林道ゲートを越えていく。僕は左から越えたが、右の隙間から侵入することができる。左にはすぐに堰堤があるので、しばらくは林道をそのまま進んだほうがよい。
沢登りをメインにすることは初めてなので、すぐに入渓したかったので沢に入る。
歩いていくとすぐに堰堤にぶつかる。堰堤は突破できないので、林道に戻る。これを何回か繰り返した。入渓地点は地形図をよくみて、堰堤が少なくなるところから始めたほうがよさそうだ。
早くに沢に入って堰堤にぶつかっても、高巻き(滝を回避して回り込んで上に登る)の踏み跡が見つからない。ルートもなく堰堤も多いので、沢に早く入ったのは失敗だった。
入渓地点としては林道の標高574m地点のS字カーブの手前辺りを選ぶとよいかと思う。そこから入渓してもすぐに堰堤にぶつかるが、左岸に高巻きの踏み跡がある。
踏み跡があるだけで、通常登山ではあまりお目にかかれない細い道を歩くので注意が必要だ。
穏やかな沢を進んでいく。今回沢登りは初めてなので、沢を歩き続けることにかなりの爽快感を感じた。樹冠の緑を見て、水の流れる音を聞くだけでも来てよかったと思える。
また少々歩いていくと滝壺というか淵がある。ここまでは深くても太ももまでしか濡れていなかったが、ここから泳ぎかと覚悟したが、右側の岩をへつれば(壁を登って)突破できた。
とはいえせっかく泳げるところなので、泳いでもよかったとは思う。
太ももまででも水の中にはいると、全身の体温が徐々に奪われて寒くなる。後から考えると脚だけを水の中に入れていても冷えるのだから、序盤に全身を水の中に入れなくてよかったと思った。
さらに進んでいくと元越大滝にぶつかる。この沢で最も大きな滝らしい。なかなか迫力がある滝でよい。ここに到達する通常の登山道はない。沢登りをする人間にしか見られることのない滝と考えるとレア感が増す。
この滝も沢登りをする人は軽々と突破するらしいが、僕は危ないと判断して、手前の土砂崩れ跡のようなところを高巻きした。
よりカンタンな道を求めて高巻きをするわけであるが、高巻きの道も決してカンタンではない。通常の登山では道迷いにあったときくらいしか経験することのできない難易度の道を進んでいく。
かなりの傾斜を進んだ。これでも滝をそのまま登るよりもカンタンではあろう。
ここも横の岩をへつれば水の中に入らずに突破することはできたが、せっかくの沢登りなので、ここから泳ぎ始めた。
濡れていない服を水の中に沈めることはは若干の抵抗があった。また上半身も水の中に入れるのはかなり冷たく、ゆっくり慣らしていった。
ここからはナメ滝と淵が連続する。この沢を登っていて一番テンションが上がった。ライトグリーンの淵と白い滝がきれいだった。
ここを泳いだり、岩をへつったり、自由に歩いて行けるところが沢登りの魅力だと思った。
また進んでいくとゴルジュになる。沢の水がこの細いところに集約されている。
僕としてはここが一番難しかった。右側からなんとか登ることができたが、どのように登ればよりカンタンに登ることができたのだろうか。
シンプルに沢を登る経験、岩を登る経験が足りないと感じた。何度も繰り返し登っていくうちにわかるようになると思うが、お手本がいるとより上達は早いのではないかと思う。
またここで岩をつかんだときに指先を切った。特に岩には何もなかったと思うが、岩で手を切る場合もあるので注意が必要だ。
ゴツゴツとした岩の間を進んでいく。鈴鹿の山は美しい花崗岩が魅力的だ。
普通に登山をしていると沢沿いの道や稜線上で大きな花崗岩は時たま見かける程度であるが、沢を登ると常に岩とたわむれることができる。
滝を登ることも楽しいが、穏やかな部分を歩くのも楽しい。緑が美しく、のんびりとした時間を過ごせる。
岩が大量にあるので、一休みに座る岩には事欠かない。
鈴鹿では渓谷でミンミンゼミに遭遇する割合が大きいように感じる。平地だとクマゼミが割と優勢なように感じる。夏っぽさが感じられて非常によい。
沢の出合いに到着する。奥の滝を進めば、水沢峠付近につめ上がることができるが、少し難しいと判断して、小岐須峠付近につめ上がる右の沢を登ることにした。
別の方の記録を見ていると奥の滝も普通に登れるようだった。しっかり観察して登れるか登れないかは判断できるようにしたい。
容易そうな右の沢を選択したが、すぐに行き止まりのような滝にぶつかる。ここは左側を高巻きした。
そしてここからは水量がかなり少なくなり、穏やかな沢を進む。木々の緑と木漏れ日がとてもよい。
沢登りは初めてで緊張感を持って登っていたが、普通の山登りの感じも出てきて穏やかな気持になってきた。
先程までは沢の砂に先行者の足跡がついていたが、ここからは発見できない。特に終盤の小さな沢は選択肢が無数にあるので、誰も入っていない沢を選択すると、人の気配など微塵も感じなくなる。
徐々に減ってきた沢の水がついになくなり、尾根線に到達する。沢が小さくなって水が少なくなると、すぐに水が枯れるかと思うとそうでもない。通常登山でもよく見た光景である。
尾根線から少し歩けば、小岐須峠に到達して、そこからもう少し歩けば宮指路岳に登頂できる。
稜線からは伊勢湾が遠望できる。名古屋方面も眺めることができる。
沢では爽快感を味わったが、左右に崖が迫りくる圧迫感と緊張感があった。久方ぶりの尾根のような気がして、かなりの開放感があった。
小岐須峠に到着した。標高は850mほどで、ここから宮指路岳まで標高差100mほどの急登を進む。
小岐須峠→宮指路岳→水沢峠→林道ゲート
宮指路岳に到着!眺望は特にはない。標高946mに字を当てているだけだが、漢字は少しカッコいいと思う。
宮指路岳の少し北は岩がむき出しになっていて景色がよい。この岩の上でしばらく滋賀県方面の景色を楽しんだ。
北側には雨乞岳もよく見える。岩がポツポツとむき出しに積み重なっていて面白い。この奇岩が見える風景が宮指路岳の魅力の一つだと思う。
あとは県境稜線を北上して、水沢峠から林道ゲートへと戻るだけである。
途中にヤマジノホトトギスを見つけた。白い花弁に紫の斑点があり、少々の怪しさを感じるもののきれいなものである。
県境稜線を進む。鈴鹿の稜線は幾度となく歩いているが、何度歩いてもよい。たまに眺望が開ける以外は、樹林の下を歩く。風が通り抜けて気持ちがよい。
沢から出てきたからか、登山道をかなり大雑把に歩いてしまった。沢は沢を歩いていれば道の間違いはない。尾根も尾根を歩いていれば間違いはない。そのような感覚で大味な歩みを進めた。
県境稜線に踏み跡がわかりにくいところがあるが、尾根の一本道なので迷う場面は少ないだろう。
水沢峠に到着した。ここからは元越谷方面へと下山する。
水沢峠からの道は若干細く、急なところもあるが、踏み跡のしっかりした登山道が通っている。歩きやすい部類の登山だと思う。
少々迷うところもあるが、沢沿いに下っているということを認識しておけば、特段問題にはならないだろう。
歩いていると小さなヒキガエルと遭遇した。大きいヒキガエルものんびりしていてカワイイが、小さなヒキガエルもカワイイ。
沢沿いではアカガエル属のカエルにはよく遭遇するが、ヒキガエルはあまり見つけられないので嬉しい。
途中に橋の残骸があった。かつてはここに橋がかかっていたのだろうが、増水で流されてしまったのだろう。かなり立派な木製の橋だと思う。
マツの幼木が育ってきているので、しばらく前に流されたのだろう。
途中アカマツの密生しているところをかき分けて進む。アカマツの葉っぱは柔らかめなので痛くはない。半袖だと少し痛いかもしれない。
アカマツの間を歩くと、ハイマツの間を歩いたときと同じ匂いがした。マツなので同じ匂いがするからだろう。
下山路は登った元越谷の沢の上を歩くところがある。「あの滝は覚えているなァ」とか思いながら通り過ぎた。
沢は全く進まなかったけれど、登山道はドンドン進んでいける。登山道のありがたさを痛感した。
登山道を進んでいき、林道と合流する。あとはここを下っていけば、林道のゲートに到着する。
今回もお疲れ様!
総括
初めての沢登りを単独行でしてみた。沢の水が気持ちよく、寒くなったもののかなり気持よかった。難易度の低い沢であれば、十分に登っていけるとも感じた。大満足だった。
初めての沢登りで気をつけるべき点は大まかに以下のことかと思う。
・登山初心者は控えたほうがよい。
・単独の入渓は控えて経験者と同行した方がよい。
・体温が奪われることで、身体能力が低くなる。
・水の中で隠れた岩があるのでヘルメットは必須になる。
初めての沢登りとはいえ、登山の経験は積んでいたので問題はなかったように思う。個人の自由ではあるが、登山せずにいきなり沢は厳しいのではないかと思う。
また単独行は褒められた行為ではない。できれば経験者との動向がよい。難しければ沢登り初心者同士でもよいと思う。
服は着込めるようにしたほうがよい。沢の水は冷たい。全身が水の中に入ると一気に体温が奪われ、身体が動きづらくなり、転倒の危険性が高まる。
初級とはいえ、岩を登るところがあり、踏み外すと地面や水の中に落下する。その際に頭を守るためにヘルメットは必須だと思った。
万全の対策と正しい判断ができれば、沢登りは楽しめそうだと思ったので、また沢に行きたいと思う。
コメント