三伏峠から塩見岳へ登り蝙蝠岳まで行き三伏峠に戻る(塩見岳2日目)

南アルプス

2022年9月11日。前回の1日目に続き塩見岳登山の2日目の記録を紹介する。1日目は三伏峠で1泊しているので、2日目は三伏峠から出発した。

三伏峠の時点で標高は2580mに達しているので、塩見岳(標高3047m)までは500mも登らない。しかしアップダウンがあるので、単純な標高差以上を歩くことになる。

塩見小屋まではシラビソ等のよい匂いのする樹林帯を進み、塩見小屋からはゴツゴツした岩の間を進んでいく楽しい山行になった。

三伏峠から見た塩見岳の姿は凛々しく、忘れることのできないものになった。また塩見岳山頂から見える富士の高嶺は美しかった。

三伏峠から塩見岳への往復の行程であれば、余裕のある山行を楽しめるだろう。

時間に余裕のある行程だったので塩見岳山頂から近そうに見えた蝙蝠岳にも登ってみたが、想像以上に遠く登るには相応の覚悟が必要だった。

1日目は以下の通り。

どのような行程か

三伏峠から塩見岳に登り、三伏峠に帰るコースで山歩きに慣れている人であれば、特に問題なく歩くことができるだろう。

1日目で紹介した通り今回は塩見岳へ向かう行程は次の3パターンを考え、余裕のある③を選んだ

①鳥倉駐車場から日帰り
②塩見小屋で1泊
③三伏峠で2泊

余裕のある行程とはいえ、スタート地点から標高が高く、空気が薄いので高山病になるリスクも高い。体調が悪ければ無理をしないようにしたい。

僕自身は標高2500m付近になってくると、安静にしていても心拍数が下がらなくなる。寝て起きても心拍数が高止まりして、その時はそれほど意識ししてなかったが、後々考えると少々しんどかった。

登山コース・コースタイム

今回は予定では三伏峠から塩見岳のゆるふわ登山を楽しむつもりであったが、塩見岳の山頂から見えた蝙蝠岳がキレイで近そうに見えたので、蝙蝠岳まで往復した

蝙蝠岳は近そうに見えてかなり遠く疲れたが、行く価値のあるいい山であると思った。

コースタイムは塩見岳までの往復であれば7時間20分だ。一日歩ける体力があれば十分に往復できる。

また蝙蝠岳までの往復のコースタイムは5時間かかる。三伏峠から蝙蝠岳までの往復は12時間20分のコースタイムの長丁場になる。

標高差

単純な標高差のみを見れば500mもなく楽そうに感じるが、実際は三伏山(標高2615m)、本谷山(標高2658.3m)、その他の小ピークを越えていくので想定よりも疲れる

三伏峠(標高2580m)→塩見岳東峰(標高3052m)

特に帰りで疲労している時に幾度となく立ちはだかるピークはしんどかった。

三伏峠から塩見岳へ往復する程度であれば、山歩き慣れている人であれば特に問題なく歩けるコースだ。逆にいうと、このコースがキツければ体力をもう少しつけたほうがよい。

疲労度・危険度

毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。

疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。

疲労度★★★
危険度★★

三伏峠小屋↔塩見岳

疲労度については1日歩く行程になるので、山歩きには慣れている程度の体力が必要である。長い時間の山歩きに慣れていなければ、短い行程の登山から少しづつ歩く時間を伸ばしていくようにしたい。

山歩きに慣れていれば塩見小屋からの登りは少々キツくなってくるものの、特段問題なく三伏峠と往復できるだろう。

危険度については樹林帯歩きでは、ぬかるみがところどころにあるものの危険ではなく、安心して歩くことができる。登山道もきれいに整備されており、道迷いの心配はほとんどないだろう。

塩見岳直下は石がゴロゴロしているので、少々注意が必要である。登山道を見失わなければ特に危険は少ないが、登山道から外れると一気に危険性が上がる

登山道の踏み跡のような平らな道に見えて、全く登山道ではないところもあるので注意が必要になる。

岩などに登山道のマークがしてあるので、道を間違えないように登りたい。

塩見岳↔蝙蝠岳

蝙蝠岳まで往復するコースにした場合は疲労度も危険度も1ランク上がる。つまり疲労度★★★★、危険度★★★になる。

疲労度については実際に僕の行程時間は12時間(休憩含む)になったので、なかなか体力的にはキツいものがある。10時間以上歩ける体力があれば、蝙蝠岳を含めたルートを検討するもの面白いと思う。

危険度については塩見岳から北俣岳の間は急な下りと切り立った尾根を進む、危険箇所だと感じた。痩せ尾根は一回のミスで滑落につながるところもあり、緊張感があった。

登山コース

三伏峠→塩見小屋→塩見岳→北俣岳→蝙蝠岳 というコースで往復した。

三伏峠→塩見小屋 コースタイム2時間50分

2日目開始!雲は多いものの青い空が見え、否が応でも塩見岳からの眺望に期待が高まる。鳥倉から三伏峠までは大した眺望はなかったので、ワクワクする。

朝のテント場の雰囲気もいい。山に登ろうとする皆の意気込みを感じる。

塩見岳に向かって進む。この分岐を右に行けば水場(往復で20~30分ほど)がある。また右への分岐は南アルプス南部への縦走路でもある。

最初のピークの三伏山(標高2615m)に到着する前にすでに絶景がドーンと現れる。

木曽山脈の姿が美しく見える。写真中央あたりに白く見えるのが南駒ヶ岳と百間ナギである。木曽山脈の右奥には乗鞍岳から北アルプスの連嶺が見える。

三伏山に到着!すでに塩見岳の全景が見える。逆光で黒い姿になっている

この後さらに近づいて見る塩見岳は思った以上に白く、黒さは感じなかったので、深田久弥は『日本百名山』で塩見岳を「漆黒の鉄の兜」と評したがこの姿を見てのことだったのかと思う。

塩見岳に向かう道は尾根線をたどる。平坦なところもあり前日の雨の影響からか、ぬかるんだところも多く、避けながら歩いた。防水のない靴だとすぐにビシャビシャになる。

本谷山を越えて進んでいく。シラビソの森は何度歩いてもよい。匂いがよい。雰囲気もよい。樹林帯歩きを長く楽しめるのは南アルプスの魅力の一つだと思う。

アップダウンはあるものの、基本的は非常に歩きやすい道である。

森の中を進む。非常に気持ちがよい。塩見小山であと少しと書かれている。ここから登りが急なるが、もうひと踏ん張りだ。

塩見小屋直前で北方面の視界がひらける。

左奥から仙丈ヶ岳(標高3032.9m)、甲斐駒ヶ岳(標高2967m)、北岳は雲に隠れて見えず、間ノ岳(標高3190m)、農鳥岳(標高3025.9m)だ。まさに日本の屋根である

また歩いた稜線を振り返る。真ん中のピークが本谷山(標高2658.3m)だ。そしてその左のピークあたりが三伏峠である。

こうして見ると大したピークに感じないが、それぞれで登り下りはまあまあキツイ。

塩見小屋→塩見岳 コースタイム1時間

塩見小屋でまで来ると森林限界になり、視界がかなりひらける。そして塩見岳がその姿を凛々しく見せてくれる。左に写り込んだ虫さんも喜んでいる。

塩見小屋の男性用トイレはかなり開放的だ。爽快な気分になる。しかし小屋前で休憩しているとトイレのニオイが風で運ばれてくることもある。

それも山のニオイの一つとして楽しむ度胸が必要だろう。

塩見小屋はきれいに整備されている様子だった。トイレの利用料は1回につき100円である。ここに宿泊するのもよかったと思いながら、塩見小屋をあとにする。

塩見岳がその姿をさらによく見せるようになる。ハイマツの海の間を進みながら、どんどん近づく姿に畏敬の念を覚える

そして今回の山行ではまだ富士山が見えていない。南アルプスといえば稜線から富士山がよく見える。山頂に到達すれば冨士の高嶺が見えるのだろうと、そちらの期待も高まる。

山頂に近づくにつれて、登山道はどんどん険しくなる。鎖にそれほど頼らなくても良い鎖場ではあるが、緊張感は高まる。

山頂直下に到着した。かなりの山頂までは急登で岩場を進んでいくことが見て取れる。

写真では伝わりにくいが、山頂直下は山の威圧感、圧迫感が高まり、少々の恐怖を感じるとともに敬意も感じる

ゴツゴツとした岩の道を進む。丁寧に赤くマーキングされているので、その道をたどる。正確に道を辿っていく。マーキングされているところ以外にすぐに足を踏み入れないように気をつける。

道を外すと一気に難易度が高まるので、歩く方も丁寧に進みたい。

そこそこの高度感もある。

塩見岳西峰(標高3047.3m)に到着!山頂からは富士山が見える。これが見たかった。絶妙に雲に隠れているものの、その存在感は圧倒的だ。

この景色は忘れられない景色になった。

右側には塩見岳東峰(標高3052m)が見える。東峰の方が少々標高が高い。

富士山は少し雲に隠れてしまった。雲はなかなか動かなかった。

塩見岳東峰に登頂!昼が近づくにつれてガスが出始めてきたので、眺望は少し遮られる。見えそうで見えないというもの乙なものである。

塩見岳→蝙蝠岳 コースタイム2時間30分

塩見岳山頂から北東に伸びる仙塩尾根と右に伸びる尾根は蝙蝠尾根で右奥が蝙蝠岳だ。塩見岳の山頂からはかなり近く見え、稜線歩きが気持ちよさそうで、時間に余裕があるので蝙蝠岳まで歩いてみることにした

そして南アルプスの規模の大きさを知ることになった

近そうに見えたので、1時間くらいで往復できるだろうと思っていた。しかし実際はかなり急いで往復に3時間20分ほどかかった。コースタイムは5時間ほどなので当然のことだろう。

いつも登っている鈴鹿山脈の気分で歩くと、なかなか到着せずに大変な思いをした。

塩見岳から仙塩尾根と蝙蝠尾根への分岐までの道を歩く。この道は岩を少し登るところがったりと少々難易度が高めであった。

塩見岳に盗聴するよりも難易度が高いと感じた。

そしてここの痩せ尾根が一番の注意箇所だった。両方の斜面に植生がなく、滑落の危険性がかなり高いように感じた。

仙塩尾根と蝙蝠尾根の分岐に到着した。今度は仙塩尾根を縦走してみたいものである。必ず楽しいものになることが予想できる。

荷物は北俣岳において蝙蝠岳に向かう。身体が軽くなったので進みやすくはなった。

蝙蝠尾根を歩く。この稜線が開放的で歩いて楽しかった。しかし長かった。ここから思った以上に下り、思った以上に登ることになる。

基本的に尾根の上を歩く一本道の登山道なので、特に道に迷うところはなく、歩いていける。石で登山道がわかりにくくなっている部分はあるが、道は尾根上を続いているので問題はない。

蝙蝠岳のきれいな三角も見えて、しばらくのんびりしたい気持ちもあったが、思ったよりも遠く時間的に厳しくなってきた。

遠くから見ると登り返しも大したことはないと思っていた。この蝙蝠岳への登りはなかなかのものだった。なだらかな稜線を鼻歌交じりで歩くことができると思っていたけれども、甘いものではなかった。

想定以上の登りを歩き、蝙蝠岳山頂に到着!雲がどんどん湧き出て富士山の姿はもはや見えなかった。

北俣岳から蝙蝠岳への道は歩いてる人が少なくなり、登山道の幅が少々狭くなったように感じる。静かな南アルプスの稜線歩きを楽しめるよい道であると思う。

出会った人も南アルプスをさすらうもの好きしかいない印象を受けた。

蝙蝠岳→三伏峠小屋 コースタイム6時間

蝙蝠岳への行きではあまり余裕がなく写真が取れていなかったが、北俣岳と塩見岳の間は岩の尾根が続く、集中力が試されるコースである。

また晴れてる間は山の頂上に注目しがちであるが、ガスの切れ間に綺麗な尾根線だけが見えるようになって、その尾根の美しさに気づかされることもある。

手足を総動員して登るところもあったりして楽しい。危険箇所なので緊張感は切らさずに進んでいく。

この来た道を戻るだけであるが、その道が長い。登山者としてよくないことであるが、暗くなるまでにギリギリ帰れると踏んでいたけれども少々暗くなってしまった。

三伏峠小屋の明かりはすでに灯っていた。温かい建物の光を見ると、なぜか自宅に帰ってきたかような安心感を覚える。

この日は4リットルほど水を持っていたが、すべてを飲み干してしまった。水場に向かうときには完全に日が落ちてしまっていて、暗闇の中を下っていくのは少々恐怖があった。

今回もお疲れ様!

総括

この日は行程時間が12時間ほどになり、なかなかキツかった。体力に余裕があれば歩いてみると楽しいと思う。

下山の際に三伏峠小屋の受付の方に、この日は帰りが遅かったことを気にされていたことを伺った。蝙蝠岳まで歩いたことを伝えると「キツかったでしょ?」と言われ、「キツかったです。」と正直に答えた。そりゃもうキツかった

また塩見岳の山頂で鳥倉から1 日で間ノ岳まで行き、熊の平小屋で宿泊して、鳥倉に戻る途中という猛者と話をした。さらに蝙蝠岳まで歩いてから塩見岳に戻ったとらしく、かなり歩いて疲れた様子だった。

登る前にはそのようなルートは全く考えていなかったが、確かにそういうルートもありかもしれないと感心した。

他の人にどこから来たかを尋ねるのは面白い。予想だにしないところから来ていたり、色々なところに向かっていたりする。そのようなルートが存在するのだと気づかされる。

自分で計画を立てていた時に思いつかなかったルートが聞けて面白いことと同時に、山は自由に楽しめるポテンシャルがまだまだあることを思う。

3日目は以下から。

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