甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根を行く(day1)

南アルプス

7月に甲斐駒ヶ岳に登山をしたので、その様子を1日目、2日目、その他という順に記事を上げていきたい。本記事では1日目の様子を紹介する。

魅惑の山

登る理由

「そこに山があるから」でもあるが、以前に北沢峠から仙水峠を経て山頂に到達したことがあり、その時にこの山の美しさに見せられた。なので今回、再度登山をすることにした。山頂の白い砂と美しい三角。僕にとって初めての3000m級の山で思い入れが深く、とても好きな山である。

麓から仰ぐ。中央の雲に隠れている山が甲斐駒ヶ岳。

日本百名山でおなじみの深田久弥氏は日本で十名山を上げろと言わればこの山を落とさないとのような最大限の賛辞を送ってる。ちなみに以前は1泊2日で1日目は甲斐駒ヶ岳、2日目は仙丈ヶ岳にのぼっている。同行した友人はどちらかというと仙丈ヶ岳に魅せられていた。どちらも魅力的な山であることに違いはないが、穏やかな仙丈ヶ岳と厳しい甲斐駒ヶ岳で好みが分かれるのかもしれない。

黒戸尾根は日本三大急登の一つ!と言われている

日本三大急登の一つを行く。谷川連峰の西黒尾根、北アルプス烏帽子岳のブナ立尾根、そして今回の甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根が日本三大急登と呼ばれているものの一つである。その名に恥ない厳しいルートであった。

登山開始(七丈小屋まで)

一日目の標高差は1600m

スタート地点の横手駒ケ岳神社(750m)から宿泊予定の七丈小屋(2350m)までの1600mを登る。途中、黒戸山を超えたあたりの鞍部で下って、また登る部分もある。テント、寝袋等の装備を背負っての登山はただでさえ疲労がたまるものになるが、今回は長いのでさらにきつい。

横手駒ケ岳神社

10時過ぎに登山口の一つである横手駒ケ岳に到着した。スタートが10時半くらいになったので、神社にいた人に日帰りかと聞かれるが七丈小屋で一泊することを伝えるとそれなら大丈夫そうという感じになった。流石に10時を超えてくると日帰りはきついので、心配していただいたのだろう。水もここで汲んで行っていいらしいが、持参したものがあるのでそのまま登り始めた。

木々に囲まれた厳かな雰囲気。

神社スタートの登山口は各地に存在あり、厳かな気分で出立できるので好きな始まりの一つである。神社の横に駐車場があるが、土曜日の午前にも関わらず自分以外の車が一台も止まっていなかった。黒戸尾根を登る登山口の主流は尾白川渓谷の方面の竹宇(ちくう)駒ヶ岳神社なので、横手駒ケ岳神社は閑散としているのかもしれない。2時間ほど歩けば合流地点に到達するが、それまでは登りも下りも誰一人とも出会わなかった。僕は空いている道の方が好き。そもそも人間の喧騒から離れることが山に行く目的なので、極稀に人とで合うくらいがちょうどよい。そういう方におすすめできるコースである

難所・刃渡り
刃渡りを振り返る。過去に滑落事故もあったらしい。

黒戸尾根で少々気をつけなければならないのが、刃渡りと五合目の七丈小屋の間の鎖場とはしごが連続する急登である。この岩の両側切り立った崖になっているので、バランスを崩して落ちれば一撃必殺である。しかし鎖を持って慎重に歩けば特に問題はない。高所恐怖症だと少々怖いところかもしれない。僕はちょうどよいスリルを感じながら進んだ。もっとスリルを味わいたい人はロッククライミングに進んで行くのだろう。

5合目~七丈小屋(急登核心部)
連続するはしご。慎重に進む必要があるッ!

5合目から連続するはしごと鎖場を超えていく。ほぼ垂直のようなはしごもあり、スリルと登りごたえがある。登りと下りでタイミングを見計らってすれ違う必要がある。七丈小屋で宿泊予定の人にとってここが最後の難関になる。かなりきつい登りになるが、ここを乗り越えたときの達成感、充実感はひとしおだ。

七丈小屋第2テント場

七丈小屋もしくはテントで泊まることができる。2021年は小屋もテント場も予約が必要となっている。また、登山道をそのまま登った先に第1テント場(十数張行けそう)、さらにその先に第2テント場(7~8張りくらいが限界?)がある。テント場からは少々下界の景色が広がっていてよい。テント場はよく整地されていて、テント場あるあるの下の石が痛いとか、傾斜のある場所しかないといったことはない。

テント場の様子。地面は平らで凸凹もしていないので、寝心地がよい。

難点が一つある。トイレ、水場までが遠いのである。トイレにちょっと行きたいときに片道5分以上歩く必要がある。それも標高差があり、比較的歩きにくい道を。今回18時に就寝したが、21時頃に起きてトイレに行きたくなった。しばらく悩んだ末、トイレに行くことにした。トイレのために暗黒の登山道を片道5分以上歩くのは相応の覚悟が必要であるッ!

テント場とキャンプ場の違い

一つは就寝時間の違いがある。テント場の夜は早い。そして朝も早い。日が沈む前に就寝して、日が昇る前に起床するというような感じである。今回はテント場に僕以外に2パーティの5人(2人組、3人組)がいた。3人組の方が18時に就寝して5時頃に出発するみたいな話をしていたので、それに合わせることにした。キャンプ場だと日が沈んでからもしばらくはランタン等で明るく、食事や談笑が続くき10時位に消灯というイメージであるので、初めてテント泊する場合はそのあたりに気を透ける必要がある。他にも違いを上げれば、たくさんあるようにな気がするので個別で記事を上げたい。

甲府盆地の夜景
山中から人間文明を眺める。

第一テント場付近から甲府盆地が明るく見える。山梨県の80万人の殆どがあの明かりの中の圏内で生活しているのだろうと思う。テント場は数カ所で経験があるが、夜景が綺麗に見えるのは初めなので、テンションが上がった。街の明かりは相当に明るく、夜空の雲まで照らすものなのだと、人間文明に舌を巻いた。今更ながらではあるが。

総括

テント泊の装備を背負って長大なコースを歩くには相応の覚悟がいる。その覚悟の前に鍛錬を積んでおく必要がある。山本正嘉著「登山の運動生理学とトレーニング学」で登山の練習は登山ですると効果が高いと言っている。登りのみのトレーニングであれば、自転車などで代用できるそうであるが、下りの伸張性収縮という筋肉が力を発揮しながら伸ばされるのは非常に負担がかかる。なので登山をするためには登山で身体を慣らしておく必要がある。特に今回のような長丁場では必須になる。事前準備を含めた覚悟が必要な山である

今回登って、非常に疲れたがまた登りたいと思う。改めて好きな山であると実感した。

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