2022年2月、積雪が多く残る中で、軽アイゼンを装備して登ってきた記録を紹介する。
鈴鹿山脈の主峰、御在所岳の一番有名な登山道である中道から登った。主峰の主峰たる理由を見せつけられた。帰りはもしかすると一番不人気な登山道かもしれない表道から下った。
中道が人気なのはうなずける。眺望がよく、適度に岩場があり、変化に富んだ面白い道である。
軽アイゼン(4本爪)で登頂して出た結論
・御在所岳(中道)に軽アイゼンで登れるか?→「登れる」
・軽アイゼンで十分か?→「不十分」である。
傾斜がキツいところでは、つま先で体を支えたいために、前爪のある10本爪以上のアイゼンを使用する方が好ましい。6~8本爪でも十分ではあると思う。軽アイゼンでは役不足感が否めない。雪山には資金が必要である。
午後から雨、雪が降ることが予想されていたこともあり、登山者が少なく、静かでよい登山になった。下りは雪が降っていたが……。
登山者の多さ | 少なめ(中道・積雪時) ほぼなし(表道・積雪時) |
駐車場 | あり |
お手洗の有無 | あり(山頂) |
コンビニ | なし (最寄りは7km先) |
温泉 | 希望荘など |
誰にオススメする山か
中道は人気のコースで楽しいが、初心者が登るというのはあまりオススメできない(初心者と登った際に聞いたが、岩場が少々怖かったらしい)。積雪がある時はなおさらである。
何度か登山に行った後に、この登山道に登ることをオススメする。確実に満足させてくれるだろう。雪山としても最初の雪山であまりオススメしない。他の山で練習してから登ることをオススメする。
・雪の御在所岳に初めて登る方(中道)
・雪が十分に踏み固められた登山道を歩きたい方(中道)
・トレースがない静かな道を歩きたい方(表道)
中道は多くの人に雪が踏み固められており、アイゼンさえ装備していれば歩きやすい登山道である。ただし積雪の直後ではなく、他の登山者が雪を踏み固めた後に登るようにしたい。
雪の御在所岳に初めて登るのであれば、中道から登ることをオススメする。
表道は不人気のコースらしく、トレースが1、2人分しかなかった。眺望があまりないことが影響しているとようである。
雪が踏み固められておらず、雪に脚を埋めながら歩いて行くことになる。また踏み抜きも頻発するため、表道はストレスが溜まるタフなコースである。最短ルートのはずが、想定外の疲労を蓄積するルートである。
駐車場
冬季は鈴鹿スカイラインが閉鎖されているので、湯の山温泉を縫う細い道から駐車所に向かうことになる。この道であっているのか?というような細い道を進む。
登っていくと行き止まりまで500mという看板がある。行き止まりが駐車場なので、そのまま進めばOKである。
冬は車がそれほど多くなく、満車になることはなさそうである。十分な空きがあるので駐車場の心配する必要はない。
鈴鹿スカイラインは例年12月中旬から4月頃まで閉鎖しているようである。各自確認をしていただきたい。
登山コース・コースタイム
今回は駐車場→中道→御在所岳→表道→駐車場の順で周回した。
御在所岳 中道→表道 周回(雪) / ずんやまさんの御在所岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
標高差
駐車場(標高560m)→御在所岳(標高1212m)
標高差650m程を登る。標高差500mを超えると中級者以上の体力が必要である。初心者では少々のキツいので避けるべきである。さらに今回は積雪しているので、余分に体力が必要である。
雪がない時期に同程度の標高差の山に登っておいて、余裕があれば登るようにしたい。
コースタイム
登り:2時間25分(中道)
下り:1時間45分(表道)
コースタイムはあくまでも目安である。
合計で4時間10分ほどのコースタイム。積雪している場合は、休憩時間と合わせて、追加で1時間以上は考えておきたい。
コースタイム自体は表道の方が、中道よりも短い。それは無雪期の話であって、積雪期は違う。トレースのない表道は難易度が高めである。そのため積雪時は同じくらいのコースタイムと考えておいた方がよいかもしれない。
登り下りで別の道を使うのであれば、表道を選択せずに、裏道を選択する方がよいと思う。裏道は歩いていないが、分岐で確認した際にはよく踏まれて、雪がしっかりしていたので歩きやすいと思う。
中道で往復する場合は以下の通り。
登り:2時間25分 下り:2時間5分 合計:4時間30分
表道で往復する奇特な方の場合は以下の通り。
登り:2時間 下り:1時間45分 合計:合計3時間45分
疲労度・危険度
毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。
疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。
疲労度★★
危険度★★
疲労度について
積雪はあるが、歩きにくくはない。むしろ、石、岩、木の根がボコボコしている無雪期の登山道よりも、踏み固められて平坦になった雪の登山道の方が歩きやすいかもしれない。
雪に注意が向かい慎重に登るようになるので、オーバーペースになりにくく疲労しにくい丁度よいペースで登ることができる。
危険度について
雪が踏み固められた登山道なので、アイゼンを装備していれば滑ることはほとんどない。安心して登ることができる。ただし軽アイゼンは登ることはできるが、注意が必要である。
急傾斜もあるので10本爪以上のアイゼンを推奨する。急傾斜を登る際には、爪先が雪に刺して滑らないようにするが、軽アイゼンではそれができない。6~8本爪のアイゼンでも十分な働きはするだろう。
装備した軽アイゼンはコレ。本当に必要最低限なので注意。
足裏の前部分のみを使う急傾斜では普通のアイゼンなしでの登りと何ら変わりない。
岩の表面は凍結してアイスバーンを形成していたが、登山道にアイスバーンはなかった。ザクザクとアイゼンを雪に突き立てて登れば特に問題はない。
登山コース
登りは人気の中道登山道から登り、下りは不人気の表道から下った。
駐車場→御在所岳山頂 コースタイム2時間25分(中道)
最初は冬季閉鎖中の鈴鹿スカイラインを進む。雪が溶けて水が路面を濡らしているところは、凍って滑りやすいので注意。
進んでいくとすぐに中登山道口という看板がある。大きな看板なので見落とすことはない。
ここからすぐに急登が始まる。花崗岩が風化してできた、まさ土(まさど)でザレた道を進む。典型的な鈴鹿の登山道という感じがする。
砂地の急登で滑りやすいかと思うが、階段が整備されており、滑らずにグイグイ登って行くことができる。
登っていくと中道と裏道の分岐にでる。ここから雪が本格的に積もっている。雪は踏み固められているので滑りやすいが、埋まることはなく比較的歩きやすい。
裏道への道も十分に踏み固められており、雪のコンディションは中道とあまり変わらないのではないかと思われる。
分岐から少し進むとロープウェイと伊勢湾がよく見える。ロープウェイの乗客から手を振られるので「見世物じゃねーぞ!」とは言わない。全力で手を振り返す。
ここから雪が踏み固められた急登になる。ここまではアイゼンなしで登ってきた。ここからはアイゼンなしでは厳しいので装備をする。
アイゼンがなければ、たやすく滑落できる。滑落したい方はアイゼンなしでどうぞ。
そこからまた歩みを進めると、中道で有名な2つの岩の1つ目が姿を表す。負レ岩(おばれいわ)である。なぜ倒れない、どうしてこうなったという疑問が尽きない。
次に到着するのは5合目の展望台である。この登山道は平野と伊勢湾を見渡すことができる好展望のコースで目を楽しませる。ここを目的地として帰宅するパターンもよいかもしれない。
5合目とあるので、半分まできたと思うかもしれないが、確認するとまだ行程の3分の1程度である。ここで半分と刷り込まれたので、その後がやたら長く感じた。
展望台から少し登ると、かの有名な地蔵岩が姿を現す。別の角度(左の写真)から見ると野暮ったい岩にしか見えないが、上(右の写真)から見ると奇跡的な岩に見える不思議。
この登山道を選択したら、この写真は撮らずにはいられない。
地蔵岩を超えるとキレットにさしかかる。中道を語る際にはキレットは外せない。
登山に慣れた人であれば、難なく通りすぎることができる。人によってはキレットは思いのほか怖いらしく、ある程度の登山経験を積んでからここに来るようにしたい。
キレットを超えてからも雪の急登が続く。御在所岳は急登の山である。
次の難所は岩峰である。岩峰は登るわけではなく、北側(登りから見ると右)へトラバース(尾根を回避する)する。ここは岩の上がアイスバーンになって滑りやすいの注意が必要である。
きた道を振り返る。ここは鎖を持って、体の安定を失わないようにする。あるいは滑って死なないように注意する。
岩峰を振り返ってみる景色は非常によい。御在所岳を代表するような景観であると思う。
最後の急登を超えるとロープウェイ駅付近に到着する。ここまでの登山道はだいたい急登である。ロープウェイ駅付近からはゆるやかな山歩きになる。
ここで下ってきた登山者に「アイゼンなしで大丈夫?」と声をかけていただいた。心配はもっともである。軽アイゼンはアイゼンとはみなされないようである。
ロープウェイ駅付近の低木樹林帯を抜けると、スキー場に到達する。ここまでほとんど人に出会わなかったので、人が多くて面食らう。
上の写真の山頂が御在所岳の三角点(ホンモノの山頂)である。ロープウェイ駅を山頂としてもよいと思うが、三角点まで行くと滋賀県方面がよく見えるので行くことをオススメする。
山頂まではスキー場の迂回して進んでいく。上の写真でいうと左の尾根から登頂した。邪魔にならなければ、スキー場を正面突破してもよいかもしれない。
山頂の一等三角点。多く人がたむろしている。山頂でたむろするのは登山中で最も楽しいことの一つである。
山頂の三角点から少し西に進むと展望台というピークがある。上の写真は雨乞岳。奥には琵琶湖が広がる。冬は空気が澄んでいるので遠くまで見渡すことができる。
鎌ヶ岳と伊勢湾。鈴鹿山脈は海と湖の間にある山であることを実感する。御在所岳山頂から見ると鎌ヶ岳は少し背が低く見える。鎌ヶ岳から見ると御在所岳はそれほど背が高いようには感じないので不思議である。
御在所岳山頂→駐車場 コースタイム1時間45分(表道)
不人気と噂の表道から下山をする。下り初めてすぐにヘルメットをかぶり、アンザイレン(ロープで登山者同士をつなぐこと)をした集団に出会った。彼らはどこから下るのだろうか。
その一人に「お気をつけて」と言われた。それほど危険な道なのかと思った。歩きにくいが、別に危険箇所はなかった。軽アイゼンという装備だから注意してくれたのかもしれない。
表道への下山道はロープウェイ付近にある。中道と違い雪が踏み固められていない。
トレースは1人か、2人分のみ。トレースを作った人も登山道を迷っていんたのか、ちょくちょく進んだ道を戻っていたりする。
踏み抜きも多くあり、脚を雪に埋められる。油断せずに踏み抜きはあるものだとして、歩くことが肝要である。
表道は基本的にあまり眺望のない、樹林帯を歩くことになる。特にスリリングな岩場もない、単に急な道を下ることになる。
途中で何度か鎌ヶ岳がよく見えるポイントがあるので、この登山道のグッドポイントである。
表道が不人気な理由は眺望があまりないことだけでなく、鈴鹿スカイラインと隣接している点もあるかもしれない。
登山道の途中で何度か鈴鹿スカイラインと接しているのが、あまり気に食わない登山者も多いのではないだろうか。
さらに下ると百間大滝見晴台がある。見晴というものの木々に隠れて、ほぼ見えない。僕の手持ちのカメラでは、どうしてもうまく取ることとはできなった。
鈴鹿スカイラインとの接点に到着する。センターライン付近のみ雪が溶けているという奇っ怪な状態になっている。歩く距離は大幅に伸びるが、登山道を避けてこちらから下るのも一興である。
車の通らない鈴鹿スカイラインも乙なものである。
ここからはさらに下りが急になる。崩れ落ちるようにして下っていく。雪もあわさって非常に下りにくい。
ここを下りきってしまえば、急な下りはほとんどない。あとは川沿いでせせらぎの音を聞きながらのんびり歩けば駐車場に至る。
武平峠への道との分岐に鳥居がある。積雪で頭が当たるくらいの高さになっている。
雪と渓流の相性は抜群である。しばらく見ていたいものであるが、動かないと寒いので、そそくさと駐車場に帰還する。
総括
中道は見るべきものの多い王道ルートである。偏屈な理由がない限りは中道で往復するか、中道と裏道を回るコースにすると楽しい御在所岳登山を楽しめる。
表道は表道はという名前にも関わらず、見るべきものがあまりないマイナールートである。特に積雪時のマイナールートは難易度が格段に上がるので、注意が必要である。
ロープウェイがあり、人が多いので御在所岳は基本的には避けているが、登ってみると間違いなくよい山だと実感できる。なんとなくで登ってみないのはよくない。
おまけ動画
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