御池岳(雪)鞍掛峠・白瀬峠周回

鈴鹿十座

2022年1月30日の記録。積雪のある鈴鹿山脈の御池岳に登った。簡易パーキングふじわらから鞍掛峠を経由するルートで登り、白瀬峠経由で下った。鞍掛峠へと続く国道306号が閉鎖されているので、峠まで歩いていった。

鞍掛峠を経由して登るのは道のりが長く、登る人が少ないのでトレースがもほとんどない。雪山に慣れていない方は避けたほうが懸命である。

ただ、鞍掛峠から御池岳への稜線はほとんど誰も歩いておらず、美しい景色が見れるので相応の装備と体力がある方にはオススメできる。

ちなみに筆者は最低限の装備(ゲイター・軽アイゼン)で登った。

登山者の多さほとんどいない(冬季)
駐車場あり
お手洗の有無あり
コンビニなし (食料などは事前購入が必要)
温泉阿下喜温泉(駐車場から7km)
風呂の営業状況については各自で確認してほしい。
三重県の天然温泉、日帰り温泉の阿下喜温泉 あじさいの里
三重県いなべ市にある阿下喜温泉あじさいの里は、みなさんの健康増進施設で、「健康増進」と「リラクゼーション」をご提供します。

誰にオススメする山か

雪のない季節であれば、鞍掛トンネル付近に駐車して御池岳に登るルートは最もカンタンなコースとなる。

しかし、積雪した場合は峠までの国道が封鎖されるので、峠まで2時間以上歩く必要があり、相応の体力を必要とする。

それゆえに峠までへの道はあまり歩く人が多くなく、積雪で歩きにくい道が続く。静かな登山が楽しめるコースである。

・雪の稜線歩きを楽しみたい方
・トレースのない雪山を歩きたい人
・静かな雪山を楽しみたい方

個人的には軽い気持ちで登ったがかなりキツかったので、覚悟を持って登っていただきたい。

駐車場

簡易パーキングふじわらに駐車するとよい。十数台は駐車できる。お手洗いもあり、ここで態勢を整えて登山を開始することができる。

国道306号からパーキングを振り返る。

藤原岳の登山口までそこそこ歩く必要があり、御池岳への登山者もそれほど多くはないので、基本的に駐車で困ることはないと思う。

登山コース・コースタイム

御池岳 鞍掛峠から白瀬峠へ周回 / ずんやまさんの荷ヶ岳(冷川岳)鈴北岳御池岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ

藤原岳は鈴鹿の中でも雪山入門に最適な山の一つであり、冬も多くの人が訪れる山であるが、御池岳に登る人はガクッと少なくなる

当初コグルミ谷から登ろうとしたが、国道306号を登っているともうすぐ鞍掛峠の登山口に行けそうだったので鞍掛峠から登ることにした。また白瀬峠を選ばなかったのは、そちらは2回使ったことがあるので、それでピストンするのも閉口ものだと考えたからである。

疲労度・危険度

毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。

疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。

疲労度★★★★
危険度★

疲労度については、9時間を超える行程になるので、十分な体力が必要である。当然、積雪の上を歩くので、通常時と比較して余分に体力を消費する。

危険度については、基本的に急なところは少なく、なだらかで広い登山道が中心である。雪庇に気をつけること、滑って転ばないようにすることさえ注意していれば、それほどの危険はないように思う。

コースタイム

登り:5時間10分
簡易パーキングふじわら→御池岳(鞍掛峠経由)

下り3時間50分
御池岳→簡易パーキングふじわら(白瀬峠経由)
コースタイムはあくまでも目安である。

合計で9時間ほどのコースタイムである。コースタイムは雪のない季節を標準として作成されているので、雪山に登る際は時間をさらに長めに考える必要がある。

なので、コースタイムどおりに歩ける人であれば、10時間~11時間ほどかかる想定で計画をたてることになる。

また山頂はなだらなか山容で見どころが多いので、散策するとなるとそれなりの時間を消費するので、その分も考えておきたい。

例えば今回はボタンブチまで散策しているが、往復で30分程度かかる。それも加えた上で山行計画をたてるべきである。初めての人であれば最低1時間程度は見ておきたい。

標高差

駐車場(標高180m) → 御池岳山頂標高1247m)

駐車場(簡易パーキングふじわら)から御池岳山頂までの標高差はおおよそ1000mほど。鈴鹿山脈では麓から登るとだいたい1000m程度になるので、標高差としては鈴鹿の中でも標準的である(かつ最大の標高差である)。

ただし、白瀬峠北西の冷川岳(標高差1054m)のピークがあるので、そこで登り下りが発生するので、そこでさらに標高差が加わる。

登山コース

簡易パーキングふじわら→鞍掛峠→御池岳→白瀬峠→簡易パーキングふじわらの順で周回した。今回一番キツかったのは鞍掛トンネルから鞍掛峠までの雪の深い登山道であった。

雪の登山の魅力はなんと言っても、雪が音を吸収するために非常に静かなことである。これはぜひとも体感してほしい

簡易パーキングふじわら→鞍掛トンネル東の登山口 コースタイム2時間20分

鞍掛トンネルへと続く国道306号は下の方で通行止めとなっている。ここから6.5kmほど歩くと舗装路の頂点にたどり着く。

通行止めの直前からすでに積雪の道である。ここから6kmも歩くのかと少々気合を入れる。

6kmは言うは易く行うは難しで、舗装路なので緩やかではあるが、雪の上を歩き続けるのは中々の苦労を要した。

鞍掛峠までの道は雪がまんべんなく積もっておりトレースは2、3人分あったが、歩きにくかった。それほど標高差があるわけではないが、ひたすら長い。それを覚悟の上で鞍掛峠までの国道306号を歩いてほしい。

国道306号からコグルミ谷への分岐。ここでトレースが半分になる。1人か2人くらいであるが、コグルミ谷から御池岳を目指している人はいるようである。

振り返ると山の中腹に走る道路がうねりながら、徐々に標高を上げているのがわかる。よく歩いたものだと感慨深い。

鞍掛トンネル。誰もいない。まずここまで来るのが相当大変なので当然である。トンネルは閉鎖されていないので滋賀県側に出ることもできる。ここの右側から登山道が始まる。そしてこれが地獄の始まりであった

鞍掛トンネル東の登山口→鞍掛峠 コースタイム30分

ここからが鬼門である。雪が深く、腰以上まであった。スノーシューのトレースがあったが、スノーシューなしの僕には全く役に立たない。雪に埋まりながら進んでいく。

雪が積もった斜面を横切るのは容易ではなかった。

途中で何度帰ろうと思ったことか。帰るにしても、国道306号の長い道を進む気持ちもあまりなかった。鞍掛峠までは泥水を啜ってでも進んでやると覚悟を決めて進んでいった。時にはハイハイ歩きをした。

すぐに腰まで埋まる。時々股間をうつ。深すぎて白いはずの雪が漆黒に染まる。

鞍掛峠までは斜面を横切るような登山道であるが、かなり雪が深く腰ほどまで雪で埋まることがあった。腰まで埋まってしまい、もがき、疲れる。しばらく止まったままでこの道を選択したことを大いに後悔した。

両腕を振り回して号泣しながら帰宅したかった。

コグルミ谷からのルートを選択していれば、これほどに大変ではなかったかもしれないとも何度も考えた。実際のところはコグルミ谷も雪が深かったのかもしれないが、それはわからない。

悪戦苦闘していると徐々に峠に近づいて来て、ついに到達した。

鞍掛峠にたどり着いてみるとほとんど雪がなく、そこから雪に苦しめられずに稜線歩きを楽しめそうだった。ここまで頑張ってきてよかったと思った。登山であまり達成感を感じるタイプではないが、かなりの達成感を感じた

途中で鞍掛峠に到達したら帰ろうと考えていたが、行けるところまで行ってみようと思い歩みを進める。

ちなみに前回、無雪期に登ったときは国道から鞍掛峠まで12分(ほぼ通常の3倍の速度)であったが、今回は1時間かかっている(コースタイムは30分)。

鞍掛峠→鈴北岳 コースタイム1時間20分

稜線は雪が風で飛ばされているのか、あまり雪が深くない。また雪が溶けて凍った硬さがあるのか、硬く歩きやすかった。それまでは腰元まで雪に埋まっていたのが、くるぶしまで埋まるか埋まらないかくらいの硬く歩きやすい雪に変わっていた。

波のような模様をつけた雪。

また稜線は木々が少なめで、開けていてかなり歩きやすく、目も楽しませてくれる非常に楽しい稜線歩きになった。先行のトレースはスノーシューがひとつだけであった。雪は引き締まっていたので、トレースはなくても特に歩きにくいことはなかった。

樹林の中は少々雪の深さがあったが、難なく歩けた。ここの木々は緑が生い茂っているときも美しいが、霧氷がついても美しい。

稜線を振り返る。

この日は風がおだやかで非常に歩きやすかった。鞍掛峠直前で雪に埋まった地獄をはやくも忘れ、この天国を味わっていた。

鈴北岳直前の急登。ここまではそれほどの登りではなかったので、そのままの登山靴で登っていたが、急斜面で滑りそうな感じがしたのでアイゼンを装着する。

テーブル・マウンテンの北西にある鈴北岳。

鈴北岳登頂(標高1182m)。ここからは琵琶湖がよく見える。ここまで来たら御池岳登頂としても良いと思う。

鈴北岳→御池岳 コースタイム50分(最短で)

鈴北岳からの気色は素晴らしい。

雄大な景色。

北には霊仙山(写真左)、その左には伊吹山が(雲がなければ)見える。また伊吹山の左には能郷白山が、そのさらに左には白山?(山座同定はあまりできていないが、おそらくそうだと思う)。

テーブル・マウンテンはいいぞ

テーブル・マウンテンと琵琶湖方面。奥にかすかに見える三角錐は近江富士。

写真ではかなり見づらいが、養老山地の向こうに見えるのは恵那山か。また左には御嶽山が見える(間違いがあれば教えて下さい)。

樹林の間がを進み、最後の急登を制すると山頂に到達する。鈴北岳への到着で、ゴールに着いた感じがするが、ここから山頂までもなかなか長い。稜線よりも雪の深さがあり、少々歩きにくさを感じるが、雪の上を歩く楽しさのある丁度いい深さである。

山頂!

雪がないと石灰岩の積み上がった山頂であるが、白い山頂に様変わりしている。この御池岳と書かれた棒はそこそこ長く、1mくらいが埋まっていると思われる。上に載せた御池岳の看板は放って置くと、雪に埋まりそうなものであるが、誰かが掘り出したのだろうか。

ちなみに雪がないとこんな感じ。かなり埋まっていることがわかる。

2018年5月撮影。

ボタンブチ方面に進むと雪原と、奥に白い頂上を持つ竜ヶ岳が見えてくる。

木が点在する雪原を行く。非常に気持の良い雪原歩きを楽しめる。多少トレースがあり歩きやすいが、多くはないので、降り積もった雪そのままを楽しむこともできる。

さらにボタンブチ方面に歩みをすすめる。鈴鹿の峰々が姿を表す。左の方に見える白い山頂は竜ヶ岳、その右奥が釈迦ヶ岳、更にその右奥が御在所岳である。中央やや右が雨乞岳、その右手前の白いところがイブネ、そしてさらに右の白いところが綿向山である。

各山に何度も登っているので、さすがによく分かるようになってきた。

琵琶湖、比良山系方面もよく見える。冬は遠くまでよく見えるのでよい。

ボタンブチから下山方向に進む。また登りになり、ついにいままで見えていなかった藤原岳も見えてくる。また伊勢湾も望むことができる。

隣の藤原岳は数多くの人が登っているようであるが、御池岳はアプローチが長いからかあまり人がいない。静かな登山を楽しめる。

ここを歩いたのが15時くらいで、年配の方に出会った。この時間にそのペースで歩いていると、明るいうちに下山できないのではと思ったが、どうやらテント泊をするらしい。

誰も来ない美しい山の上でテント泊とは羨ましい限りである。ただし、テント泊はおおやけに認められているものではないので、もしするのであればゴニョゴニョである。

今回登っていて出会ったのはその方一人だけであった。わざわざ人の少ないルートを通っているが、さすがにに誰とも会わないと一抹の寂しさを覚える

ここからまた山頂方面に向かい下山に転じる。

御池岳→白瀬峠→簡易パーキングふじわら コースタイム3時間50分

木和田尾根、白瀬峠方面に向かうルートはよく踏み固められており、歩きやすいが、滑りやすくもある。最初はアイゼンを付けていたが、途中から外して半ば滑り下りるような形で下っていく。

シリセードの跡がついている。シリセードはお尻で滑りおりること。

後で調べたが、登山靴でそのまま滑って下ることをグリセードというらしい。その際、スピードが出ても停止することができるピッケルは必須である。今回は止まりそうなスピードでしか滑っていないので、まだ安全かと思う。

このあたりは結構傾斜があるので、勢いよく滑ることができる。滑らず下るにはアイゼンが必須。スノーシューでもよいだろう。

白瀬峠に向かう稜線。途中に標高1054mの冷川岳がある。この登り返しが地味にしんどい。

冷川岳付近で眺望のよいところがある。中央に見えるのは御嶽山。

あとは時折ある看板にしたがって下っていくだけ。この下りがそこそこ長い。1000m下るのは骨が折れる。

途中、伊吹山のアーベントロートが見えた。美しい。しかし、この場所でこの日の傾き方はまずい。

山口登山口についたときはすでに真っ暗であった。暗闇でも何度か通ったことのある道なので、迷うことはなかったが、初めてだったら迷っていただろう。そのようなこともあるので、太陽の高いうちに下山を始めることは鉄則である(守りたい……)。

総括・反省

総括

人が少なく、静かで山を深く楽しめる良コースであると思う。その魅力は本文中に書いたとおりである。アプローチが長いというデメリットがあるものの、それを補ってあまりあるほどの美しい姿を魅せてくれるので、相応の体力がある方には強くオススメする。

反省

白瀬峠からのルートは2回登り下りしたことがあるので、かなり甘めの時間で見積もっていた。一度登ったからといって、次回はそれよりも速く登れると勘違いしてしまう。人間の想定の甘さには苦笑してしまう(自分の失敗を人間の失敗としてしまう傲慢)。

山行計画を立てたことがある人ならわかるが、計画はどんどん遅れていくものである。それを織り込んで計画を作りたい。

今回、鞍掛トンネルから登山道に入り、途中で何回も撤退することを考えていた。今回、これほどキツかったのは2つの理由があると考えた。

1.トレースのない道を選びたかった。
中二病的であるが、誰もが歩いたことのない道を歩きたかった。トレースがあれば歩く難易度が想像に下がるが、難易度の高い道を選ぶ傾向にある。
装備が整っていないので、トレースのある人の多く、難易度の低い登山道を選ぶべきであるのに、トレースのない道を選んだのは失敗であった。

2.積雪の深さを全く考えていなかった。
前回、イブネで撤退したが、雪は深いところで膝上程度までなかったので、脚を大きく上げる必要があったが、歩くことができた。今回は腰の上までの深さの雪であった。身動きが出来なくなってしまった。
鈴鹿の山は北に行くほど、高くに登るほど雪が深くなることを覚えた。失敗というよりは、このルートはこのような雪の積もり方をするので、このように歩けば良いという知見を得られた。収穫のある登山であった。

雪山に対する知見を得たので次回に活かすことにする。

おまけの動画。参考までに。

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