2022年12月29日に滋賀県方面から雨乞岳に登った。
甲津畑方面から岩ヶ谷林道を通った。杉峠との分岐地点のツルベ谷出合から大峠を経由して清水の頭に向かう登山道はトレースがなく苦労した。とても疲れた。
清水の頭までは風景を楽しめたが、雨乞岳の山頂には雲がかかっていて、雨乞岳では景色は楽しめなかった。そのかわりガスの中をさまようアクティビティを楽しめた。
雪山歩きをある程度している人であれば、トレースがあると比較的容易に歩けるだろう。トレースがないとかなり疲れるので、トレースがない場合も想定して計画をたてるほうがいい。
大峠を経由するルートはそれほど多くの人が歩くルートではないので、トレースがあればラッキーという感覚がほしい。
誰にオススメする山か
今回は積雪のある時期に登った。大峠へのルートはトレースのない静かな道だった。人の少ない静かな登山道を歩くにはうってつけのルートだ。 ただしトレースがない可能性が高いので時間と体力には十分に余裕を持っておきたい。
間違っても初心者が歩く道ではないと思う。
・静かな道を歩きたい人
・まっさらな雪を歩きたい人
・見通しのいい尾根を歩きたい人
また積雪のない時期に同じルートを登った経験がある方がいいと思う。山登りに危険が多いので、準備は十分すぎるほどにしたい。
駐車場
登山口付近の広くなったところに駐車することができる。数台駐車可能だ。積雪時は登山者が少ないので、駐車できない心配は少ないだろう。 甲津畑から永源寺グリーンランドまでの林道は除雪がされていて、それ以降は雪が積もった状態だった。 雪の道を数百m進めば駐車できるところに到着する。
2022年12月29日の8時50分頃、登山口横のスペースには3台ほど駐車されていた。2021年12月30日にもここから登山を開始しているが、そのときも2~3台ほどの車だった。
積雪のある時期はそれほど人の多い登山口ではない。
登山コース・コースタイム
今回は甲津畑の集落から東に進んだ岩ヶ谷林道の起点から、大峠を経由して雨乞岳に登った。雨乞岳からは奥ノ畑分岐の東あたりに続く尾根を使って下った。
おおよそのコースタイムは登り4時間50分、下り3時間40分ほどで合計8時間30分ほどのコースタイムになる(コースタイムはヤマレコを参照、一部主観)。
積雪なしのコースタイムなので、積雪分を考慮して長めにコースタイムを見積もっておく必要がある。
標高差
登山口(標高420m)→雨乞岳(標高1237.7m)
登山口の標高420m→雨乞岳標高1237.7m 標高差はおおよそ800mほど歩く。雪がなくても中級者以上が登るコースになる。さらに雪があるので、体力、経験、時間に余裕を持った状態で登りたい。
疲労度・危険度
毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。前提として山は常に転倒、滑落などの危険性があることを忘れないようにしたい。
疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。
疲労度★★★☆
危険度★★★
疲労度についてはトレースがなかったこと、山行時間が8時間以上になったことを踏まえて★3に★0.5個分の意味を込めて☆をつけた。歩行距離、標高差自体はそれほど長くも大きくもないので、トレースの有無で疲労度は大きく変わるだろう。
危険度についてはツルベ谷出合から大峠までは沢沿いを進むコースで、雪の積もった岩の間を進んでいくので危ない。
沢のコースでは雪の深さはまちまちで歩きにくい。踏み外してコケたり、沢にハマったりする危険性がある。 また雪の積もった斜面を横切るところがあり、注意して歩かないといけない。
登山コース
このコースは林道歩きが長い。登りの緩やかな林道が長く続き、森の中の散歩を楽しめる。
岩ヶ谷林道起点→清水頭 コースタイム 4時間
ツルベ谷出合までは緩やかな登りの道を歩いて行く。しばらくはゆったりとした道を進み、積雪した道に足を慣らしていく。
雪の上を歩くのにだいぶ慣れてきたところで、橋を渡る。雪が積もった沢は、何度見てもいい。少し眺めてからまた歩みを進める。
しばらく歩いていくと、ツルベ谷出合に到着する。ここから杉峠への分岐と大峠への分岐が分かれる。
杉峠への道はトレースが何人分かあって歩きやすそうだった。大峠へのトレースは1人分のみだった。1人でもトレースの有無は体力への影響は大きいのでありがたい。
大峠方面は沢沿いのルート進む。ここが最初の渡渉ポイントだ。それほど大きな沢ではないが、1歩で渡れそうなところを探す。
1歩で渡れたとしても足を運んだ先に雪が積もっていたり、凍っていたりするので十分に注意して渡渉をする。
沢沿いの道を進み、左右に傾斜が迫る谷になる。ここでツルベ谷出合から続いていたトレースがなくなる。このあたりで先行者は引き返したのか?
ここからはトレースがなくなり、雪が深い斜面を横切ったりするので体力を消耗した。ここで引き返すというのも一つの判断としていいのではないかと思う。
雪の積もった沢を何度も渡渉するのは、リスキーな行為だ。慎重に進む必要がある。心配であれば沢筋のルートは控えたほうがいいと思う。
沢を進んでいく。沢の真ん中は進むのが難しそうだったので左の斜面にピンクのテープがあるので、それを目印に進む。
この左側の斜面が雪が深くて進むのに苦労した。急斜面は雪が深くなりがちで、頑張ってラッセルするしかない。モフモフと雪とたわむれながら進む。
ところどころ雪が黄色くなっているところがあるが、獣のアレなのだろう。
雪の中をもがきながら、やっとのことで大峠に到着した。ヤマレコのコースタイム50分だったが、100分もかかり2倍かかってしまった。計画には余裕を持っていたが、それよりも遅くなってしまった。
大峠で撤退することを考えたが、清水頭は以降は樹林がなく、進みやすくなりそうだと楽観的な予想を立てて進むことにする。
戻るにしても自分の足跡があるので、下りはそこまで時間はかからないだろうと考えたことも進むことの理由だ。
大峠から清水頭へ進む尾根の最初はかなりの急登だ。雪のない時期に来たときは登山道があまりなく、急で滑りやすく登りにくかった記憶がある。
雪が積もるとさらに登りにくくなった。キッツと思いながら、ゆっくりだったけれども確実に進んでいった。
最初の急な坂を登り切るとヤマモモ科の木々が多い緩やかな道になる。道幅は狭めで、枝が邪魔で体をかがめて抜けるところもある。
道中に展望のよい岩があるので、その上から周囲の山を眺める。西に目を向ける。左奥は綿向山だ。綿向山から北東に伸びる尾根は樹木がなく、真っ白でいい。
右側のピークはイハイガ岳できれいな三角錐の形をしていて、大きくはないもののわかりやすい。
東に目を向けるとこれから歩く尾根が見える。左奥が雨乞岳、そこから少々右に下ったところが清水頭だ。
近そうに見えるが、雪の中を進んでいくにはまあまあ体力を使う。
わかりにくいが今回のルートで最も難しいところの一つがこの岩の脇を歩くところだった。岩の向こう側の段差が大きく、下の雪の深さも予想しづらく、慎重に進んだ。
アセビなどの灌木の枝葉にも雪がダマになってくっついて、重さで枝が曲がって道を塞いでいたりする。灌木が曲がりがちな原因だったりするのかもしれないと思う。
背の低めの木々が繁茂しているところを抜けると、先程よりは大きめな木々が立っている森に到達する。
葉っぱがすべて散っているので、枝の向こうから景色が見える。葉っぱのある季節だと眺望はないだろうが、ここは新緑の季節がきれいなのだろうと思う。
雪の深さはずっと膝くらいまでで、足を高く上げて歩く。
急な登りと緩やかなな道を繰り返して、清水頭に至る直前の急登に差し掛かる。ここからは木に着雪がある。
清水の頭からはほとんど樹木がなく、吹きさらしになるので服を着込む。また行動食もまとまった量を食べて備える。
道中は青空になったり、曇ったりで期待はあまりしていなかったが、案の定ガスだった。真っ白な雪原が広がっているのはきれいで嬉しい。
鈴鹿で樹木のない尾根を歩けるところは多くはないので、多少の苦労はするが登る価値は十分にあると思う。
大峠から清水の頭までのトレースは全くなかった。それほど人の入るルートではないので、計画を立てるときはトレースはないものだと考えたほうがいい。
大峠から清水頭までは2時間10分かかった。ヤマレコのコースタイムは2時間なので、おおよそコースタイム通りには歩けている。雪のない時期に以前歩いたときは50分で歩けたので、そこまでかからないだろうと思っていたが、雪山装備は足が重くなり、想定外に足が進まなかった。
当然それを考えて計画を立てる必要があった。今後トレースがあることを予想できても、トレースなしとしてコースタイムを算出するようにしたい。
これまでも楽観的な計画のもと、時間がどんどん遅れることがあった。十分に余裕を持った計画を立てる重要性を改めて感じた。
清水頭→雨乞岳 コースタイム 50分
清水頭(標高1096m)に到着した。木々がなくなると予想通り、風の影響で雪はそれほど積もっていなくて歩きやすかった。歩きやすい雪道ほど気持ちのいいものはない。
また想定外に時間がかかっていたので、引き返すか進むかをここで判断しようと思っていた。
同じ道で撤退することも考えていたが、清水頭からはおそらく雨乞岳へと続くスノーシューの2人組のトレースがついていたので、ありがたく使わせていただくことにした。
雨乞岳に向かって進んでいく。今回のルートで最も気持ちのいいところだった。ここを歩きたいためにこのルートを選んで正解だった。
雨乞岳の山頂は雲に隠れてしまっていた。雲の流れが早いので晴れるのを少し待ったが、どうも晴れそうもないので、歩みを進める。
南雨乞岳へ続く登りの途中から清水頭へ続く尾根を振り返る。鈴鹿の中で最も美しい尾根の一つだと思う。
こうしてみると風下側には小さめの雪庇が発達しているとわかる。風下側にはあまり近づかないようにして正解だった。
南雨乞岳手前の登りを進む。雪がない時期は少し北の方から回り込むような道になるが、積雪があるとまっすぐ登れるのが気持ちいい。
下から見えていた雲の中はあられが降っていた。顔に当たるとパチパチと少し痛かった。
やっとのことで南雨乞岳に登頂した。景色はきれいな白だ。
ガスでどの方向も白い斜面しか見えず、一瞬迷ったが北に向かって進む。少し進むとトレースも見つかったので、そのまま北に向かって進む。
雨乞岳への道はこんな感じで何も見えなかった。晴れていればとは少し思ったが、白いところをさまよい歩くのも、それはそれでおもしろいと思う。
悪天候をおもしろがれる気概を持つことが、自然を相手にする遊びでは重要だと思う。
ところどころ踏み抜きがあったり、雪が深いところがあって注意が必要だった。
雪がない時期は笹をかき分けて進む道なので、その上を歩く方が少し楽かもしれないと思った。
雨乞岳→岩ヶ谷林道起点 コースタイム 3時間30分
雨乞岳山頂に到着!今回の最高点の標高1237.7mだ。雪のない時期は笹でごちゃついた印象があったが、雪で無表情なスッキリした印象になった。これはこれでいい。
山頂には池があるが、それは当然雪の下のようだった。
雪が深いところもある道を進んでいく。杉峠を経由して下山する計画で、杉峠を目指して北に歩いているつもりが、トレースが少々西を向いていた。
トレースはどうやら奥ノ畑の分岐へつながるルートのようで、そちらの方が距離が短くなるので時間が押していたこともあり、トレースをたどることにした。
奥ノ畑分岐への尾根はかなりの急坂だった。雪の斜面を滑るように下っていく。思った以上に急な下りが長く続いた。下りならサクッと下れるけれど、登りに使うには少々骨が折れるルートだと思った。
あいも変わらずトレースはスノーシューが2人分あるので、それも頼りにして進む。
時間が押しているので、日が暮れかかっていた。山登りは早出早着が鉄則とはいえ、山で見る夕日はきれいでいい。
ライトは持ってきていること、ここを尾根を下りきってしまえば、一部の箇所を除いて広く歩きやすい道になるので、問題なく歩けると判断してのこの時間の行動だ。とはいえ遅くなったのは反省した。
奥ノ畑分岐に到着した後はしっかりとしたトレースがついていて歩きやすい。快適な雪上歩行を楽しんだ。ここからの緩やかな登山道がわかってはいたが長かった。
途中で暗くなったが林道になっていたので、特に問題なく歩いた。
今回もお疲れ様!
総括
今回も感じたのは自然は容赦してくれないということで、自分の希望的観測は外れることも多々あると改めて知った。
この雪深い登りを超えれば、おそらく雪が浅くなっていて歩きやすいのではという希望はすぐに散ることになった。自然は手加減なしだ。希望は案外簡単に散るので、最悪の事態を想定し、十分すぎるぐらいに準備をして山に登る必要があると改めて感じた。
山には厳しさも突きつけられるが、今回の山行は雪の清水頭を歩けてとても満足だった。トレースのない道を歩く十全な準備をして向かってほしい。
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