高野三山 摩尼山・楊柳山・転軸山 女人道を歩く

低山その他

高野山は1872年(明治5年)に女人禁制が解かれるまでは、女性が入ることができなかった。高野山に入れなかった女性は高野山の周りを囲む八葉の峰と呼ばれる峰々を歩いて、弘法大師御廟を拝んだといわれる。

今回は奥之院から摩尼山・楊柳山・転軸山の高野三山といわれる山々を歩き回った。5月初旬の新緑を愛でながら、標高1000m付近の稜線歩きは気持ちのよいものであった。道中ほとんど眺望がないので、景色を楽しみたい方にとってはあまり楽しくないかもしれない。

また三山の山頂にはそれぞれ祠が祀られており、信仰の深さを感じることができた。

登山者の多さ少なめ
駐車場あり(無料)
お手洗の有無あり
コンビニ高野山の西側にあり
温泉なし

場所によってはコンビニが遠くなるので、徒歩で高野山内を移動する際は、登山用の食料を補給するタイミングを考えておきたい。

今回は高野山2日目である。1日目にふもとの慈尊院から町石道を通って高野山に登りついて宿坊に泊まった。1日目は以下の記事を参照。

誰にオススメする山か

かつて女人禁制であったゆえに高野山に入れなかった女性たちが、弘法大師御廟を拝みたいと歩いた信仰の道であり、その信仰心を感じたたい人にオススメする。

3時間以上の道のりになるので、山歩きが全くの初心者は少々キツいかもしれない。運動習慣があれば特に問題はないだろう。

・信仰の深さを感じたい人
・高野山を味わい尽くしたい人
・緑の稜線歩きを楽し見たい人

緑も美しく、通常の山歩きとしても楽しめるコースになっている。

高野山の雰囲気を味わいたいのであれば、高野山の街を歩き、寺社を巡るほうがよいだろう。それには飽き足らず、さらに高野山に対する理解を深めたい人に登ることをオススメする

上で通常の山歩きとして楽しめると書いたが、道のほとんどが木々に囲まれていて眺望がない。眺望を期待して登る人には物足りない登山道になるかもしれない。

駐車場

車で訪れるなら中の橋の駐車場に駐車することがよいかと思う。

高野山の中にはいくつもの無料駐車場があるので好きな場所を使えばよいが、今回は奥之院から高野三山を巡るので、ここから出発してここに帰着するルートがよいのではないかと思う。

公共交通機関で訪れる場合は高野山内のバスで奥之院前まで等、近くまで乗っていけばよいだろう。

登山コース・コースタイム

以下は参考までに僕が回ったルートである。

摩尼山・楊柳山・転軸山 / ずんやまさんの転軸山楊柳山摩尼山(和歌山県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ

奥之院の入り口から出発して、また奥之院の入り口に帰着するルートで歩いた。奥之院の神聖な雰囲気を味わったあと、急な坂を登って山の山頂に立つルートである。

わかやま観光|モデルルート 女人道(高野三山)
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録された高野・熊野は「パワースポット」としても注目されています。はじめて歩く方から、トレッキング愛好者向けの中・上級コースなど、熊野古道や高野参詣道を歩くためのモデルプランを交通機関や宿泊地・トレッキン...

和歌山県の公式サイトでは歩行時間は3時間30分ほどとされている。

標高差

奥之院入口(標高800m)→摩尼山(標高1004m)→楊柳山(標高1008.6m)→転軸山(標高約910m)

最高峰で楊柳山の1008mなので、標高差は200mほどである。数字で見るとそれほどキツくはないが、各山の山頂付近は急な登りになっているので、

コースタイム

周回するルートは合計3時間30分ほどである。休憩なしの時間なので、コースタイムと比較して自分がどれくらいで歩けるか余裕を持って計画を立てたい。

・奥之院→御廟→摩尼山 1時間20分
奥之院の入口から弘法大師御廟に参ってから摩尼山に登る。御廟まではほとんど平坦で、摩尼山へは急な登りがある。

・摩尼山→楊柳山 35分
摩尼山から一気に下り、また一気に登る。ゆっくりとしたペースで歩きたい。

・楊柳山→転軸山 1時間5分
転軸山の直前は急登があるが、それ以外は比較的ゆるやかなコースである。

・転軸山→奥之院 35分
転軸山を下ってしまえばゆるやかな道である。

疲労度・危険度

毎回、独断と偏見で疲労度と危険度を評価している。

疲労度★~★★★★★(★1個が最も楽)、危険度★~★★★★★(★1個が最も安全)。上記の疲労度、危険度からすると今回のコースは以下のとおりである。

疲労度★
危険度★

標高差は200mなので、一つ山であればそれほど疲れることはないだろう。今回は3つの山を歩くので、当然3回登り下りを繰り返す。三山を歩くには少しは登山に慣れていたほうが安心だろう。

危険箇所はほぼない。よく整備された登山道で迷う心配もあまりない。間違えたとしても整備された道なので、そのまま引き返せばよい。

僕は摩尼山に登る際に自動車用の林道をそのまま歩いていて、登山道を通り過ぎていたので引き返して登山道に入った。

登山コース

コースは奥之院→御廟→摩尼山→楊柳山→転軸山→奥之院で回った。

前日は宿坊の清浄心院に泊まったので、ここからスタートする。6時30分から1時間ほどの朝の勤行にも参加したあと、チェックアウトする。

非常によい雰囲気で高野山に来た際は、少なくとも一泊は宿坊で過ごすべきと思った。さらに高野山を味わいたい方は連泊も考えるとよいと思う。

奥之院~御廟~摩尼山 コースタイム1時間20分

清浄心院は奥之院の入口と目と鼻の先である。聖と俗が入り混じった高野山の街中と比較すると、奥之院は混じりけのない聖域である。一気に厳粛な雰囲気になる。

入口から最奥の弘法大師御廟までは2kmほどである。ほとんど平坦で気持ちよく歩いて行ける。

奥之院のスギは太く成長して、悠久の時間を経ていることが伝わってくる。

墓には鳥居が立てられている。古い墓は五輪の塔になって苔むして歴史を感じさせる。ときどき異常に大きい五輪の塔もあり驚く。

灯籠が立ち並ぶ石畳の道をひたすら歩く。もっと短いものだと思っていたが、かなり長いと感じた。ここを歩くのは楽しいので問題はない。

しばらく歩き進めると弘法大師御廟に到着する。御廟直前の御廟橋をわたれば聖域の中でもさらに厳粛な場所となり、写真撮影が禁止となる。御廟では今でも弘法大師が瞑想をしているといわれている。

写真を撮影できたとしても現地の雰囲気を伝えることは、ほとんどできないと思う。それほど異質な空気がある。実際に味わうことをオススメする。

御廟から戻り護摩堂の左脇から摩尼山に続く道路に出ることができる。

左から道路に出ることができる。

道路にでればそのまま歩いていく。最初は舗装路を進んでいき、登りから下りに変わった直後、右側に林道との合流がある。摩尼山へ看板があるので、見落とさないようにしたい。

林道に合流したあとしばらくすると、登山道との分岐がある。こちらも看板も見落とさないようにしたい。僕は看板を見落として、しばらく林道をあるき続けていた。

左の影になっているところに看板がたっている。

新緑の木々の間を抜けていくと摩尼峠に到達する。かつては東にある集落に抜ける道として使用されたようである。

ここから高野山を一周する女人道に合流している。要所に祠が祀られており、信仰の歴史を感じることができる。

高野三山に共通しているのは、山頂直前の急登である。それほど距離を歩かなくてもよく、標高差もないと油断していると思ったよりも体力を奪われる。なるべくゆっくり登るようにしたい。

毎度ながら写真では全く急登に見えない。

急登を終えると摩尼山(標高1004m)山頂に到着する。木々に囲まれて眺望はない。木々の間を風が通り抜ける気持ちのよい頂である。

摩尼山山頂。

摩尼山~楊柳山 コースタイム35分

摩尼山直後のトラバース道は若干細めなので、踏み外さないように注意して歩く。トラバースを過ぎると小ピークの東摩尼山、そこから下りになる。

山頂から山頂に歩くので、下ったあとは登りになる。それがまた急登である。頑張って登ると楊柳山(標高1008.6m)につく。登頂するとまた祠が祀られている。こちらも眺望はない。

楊柳山山頂。新緑がまぶしい。

楊柳山~転軸山 コースタイム1時間5分

楊柳山から転軸山へは、摩尼山からの下りよりも少々長い。下りの途中からは麓の紀の川方面を一瞬眺めることができる。

高野山の中にいると1000m近い標高にいることを忘れているが、山の上にいることを思い出せてくれる。

少々下ると子継峠(粉撞峠)に到着する。橋本市から高野山に登る黒河道はここで合流する。

一本杉で舗装路と合流して少し歩くと、転軸山への登山道が現れる。

転軸山への登りもヤワではない。本日最後の登りを踏ん張ると転軸山(標高約910m)に到着する。ここも祠があり、眺望はない。

転軸山山頂。

転軸山~奥之院 コースタイム35分

転軸山から下っていくと舗装路と合流する。あとは奥之院に戻るだけである。

途中に柵のようなものがあるが、そのまま進んでいくと奥之院に到着する。

高野三山巡りはこれにて終了する。あとは高野山の散策である。登山者でなければ、こちらのほうが一般的だろう。

高野山駅から下山する

一通り散策したあとは下山する。高野山に来る際は歩いて登ってきたが、下山は公共交通機関ですることした。

最後にもう一度大門が見たかったので、大門を見てから大門付近のバス停からバスに乗った。

高野山内にはいたるところにバス停があり、20~30分に一本程度バスが走っているので、それに乗ってケーブルカーのある高野山駅に向かう。

2015年に改修された南海電鉄高野山駅。

高野山駅は標高867mにあり、高野山の街中よりも若干標高が高い。駅舎の2階は休憩スペースが設けられており、橋本市方面まで眺めることができる。

展望台からの景色。

ケーブルカーは急斜面を走っている。最も勾配のきついところでは傾斜角度が約30度ほどある

30度というと三角定規の細長い角と同じで、てんで大したことなさそうではあるが、実際にはかなり急に感じる。体感では60度くらいに感じる。何を言っているかわからないと思うが、30度はこれほど急なのかと思う。

乗車料金は大人1人500円である。

スタンドバトルが始まりそうなケーブルカー。

ケーブルカーは高野山駅と極楽橋駅がつながっている。極楽橋駅からは通常の列車が運行している。登ってきた慈尊院に近い九度山駅で下車して帰路についた。

総括

1日目はふもとの慈尊院から高野山まで歩き、2日目は高野三山を巡った。1日目は高野山の街中をほぼ通り抜けるだけ、2日目は三山巡りで半日を費やしたので、高野山の街中を十分に見てまわることができなかった。

町石道や女人道を歩くことがメインであれば、今回の行程で十二分に満足できる内容になるだろう。高野山の寺を見てまわりたいのであれば、徒歩で行くことを止めるか、もう1泊することをオススメする。

とはいえ宿坊に泊まるだけで朝の勤行や昼の護摩行に参加できるので、宗教体験のさわりとしては十分であった。総合的に満足できる旅であった。

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